アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

8.耐震補強工事の適正価格

 阪神淡路大震災の後、役所が耐震調査の補助を行うケースも増えました。しかし、現在の建築基準法に基づいて建てられてないため、『基礎から全面的にやり直さないとダメ』という診断結果がでることになります。かといって、新築に近い改修費用が捻出できるはずもなく、結局のところ『調査だけで終わり』になり、最近は調査すら見かけなくなりました。
 そこで、新手の商売が出現しました。「屋根裏を補強しないと家が倒壊する危険がある」といって脅かして高額の請求をするのです。悪徳瓦屋さんの副業だと思うのですが、みんないろんな話法をもちだすのでびっくりします。だって、普通に考えても屋根裏だけの補強ではダメで、お住まい全体をバランスよく補強する必要があるからです。
 2008年に「改正特定商取引法」と「改正割賦販売法」が施行されたため、悪質な業者は減りましたが、やはり、注意が必要です。
 
 大抵の古いお住まいは、あんまり金物が使われていません。もちろん、良い仕口をされていれば、柱の足元が動いたり、梁が外れたりすることはないのですが、実際はなんらかの補強が必要な場合がほとんどです。
 耐震補強の方法は2種類あります。

1.仕口ダンパーを使う

 ・・・地震の際、ダンバーにより揺れを吸収して、倒壊を防ぐ。
 
 現在の建築基準法では、「耐力壁を作って地震の際に揺れないようにする」のですが、そもそも古いお住まいは、そんな壁がありません。昔の建物は、地震の際、壁が割れて揺れを吸収するように作られています。改修の際もそうした考え方を応用するのです。
 では延床100㎡の建物の場合を例にとって説明しましょう。仕口ダンバーは、1坪あたり1ヶを目安に東西南北バランスよくいれるのがよいといわれています。
 この金額はあくまで目安です。1軒ごとに建物の状況は異なりますので、詳しくは担当されている工務店さんとご相談ください。

A:仕口ダンパーによる耐震補強工事
名 称 数量 単位 単 価 金 額
設計図・補強計画費 1   30,000円
仕口ダンパー 30 8,500円 255,000円
木材材料 10 ヶ所 5,000円 50,000円
取付手間(既存内装解体、釘金物材料共) 30 ヶ所 5,000円 150,000円
仕上復旧費(壁塗直し、天井・床貼り直し) 10 ケ所 10,000円 100,000円
雑費・諸経費 1   50,000円
合  計(A) 635,000円+税

 設計事務所の指導の元、構造計算書をお求めになられる場合は、別途設計費が必要になります(約40~60万円)。また、仕口ダンパーは、柱と梁、柱と土台といった材料の接合部に取り付ける金物です。そのため、大和天井(梁が露出し、天井裏を見せる天井)や、塗り壁といった、『構造材が見える建物』の補強に適しています。天井を貼ったり、畳をめくって床を貼ったりして洋間に改造されている場合は、既存の内装の撤去が必要になりますので、この工法は不向きです。
 なお、この工事をすると、建物のあちこちに「ダンパーを付けるために壁や天井をめくった跡」が残ります。
 詳細は、『仕口ダンパーによる耐震補強』のページをご覧下さい。

2.住宅金融公庫指定金物を使う

 ・・・地震の際、金物で固定しできるだけ揺れないようにして倒壊を防ぐ。
 梁と柱、土台と柱、梁と梁といったようにできるだけ構造体同士を金物で接合し、お住まい全体を固定する工事です。洋風のお住まいや、町家であっても改修を繰り返されているようなお住まいの場合、こちらの方法で補強します。また、「ベニヤが太鼓状に張ってあって中が空洞の壁」のように施工後の復旧が簡単な部分にはお住まいのバランスにあわせて筋交いをいれたり、屋根裏で懐に余裕のある部分には雲筋交いをいれたりと、費用のかからなさそうな部分を選んで補強します。
 少しみてみましょう。

B:住宅金融公庫指定金物による耐震補強工事
名 称 数量 単位 単 価 金 額
設計図・補強計画費 1   50,000円
金物費/火打金物コーチ止30本18- 平金物N45止60枚12.6- スリムプレートN90止20枚6.3- 山形プレートN90止20枚6.3- カスガイ40本1.2- など 44,400円
大工手間 6 人工 24,000円 144,000円
釘金物材料 復旧材料(点検口、補修木材他) 1   40,000円
副資材 足場板、補強用ケンド等 1   10,000円
養生 跡片付 1   8,000円
運搬 小運搬 1   8,000円
雑材 消耗品 工具損料 1   12,000円
雑費・諸経費 1   26,000円
合  計(B) 342,400円+税

 屋根裏にもぐって、補強できるところを補強し、
 2Fの和室の畳をめくるか、1Fの天井点検口から天井裏にもぐって補強できるところを補強し、
 1の和室の畳をめくるか、床下収納庫から床下にもぐって補強できるところを補強します。
 ここに例示しているのは、「たとえばこのくらいの金物を使えたら・・・」としているだけで、改修をされてめくれないところがあればその分減額できますし、一方、1F内部が駐車場で強度がないため頬杖を入れたり、畳下に構造用合板を固定して剛構造したりすることがあればその分増額になります。
 このあたりは、お住まいにより千差万別です。金物代はそんなに高くありません。どちらかというと、ほとんどが手間仕事です。よって何日かかるかにより費用が増減すると思われたら良いと思います。
 工事といっても、ほとんどが、まったく掃除をしていない屋根裏・天井裏・床下にもぐる工事ですので、職人さんはどろどろです。汚れ仕事ですので、あんまり楽しい仕事ではないのですが、仕事柄、施工させていただくケースも増えてきました。どろどろの職人さんが天井裏からでてきたら、『ご苦労さん!』と一声かけていただくと大変嬉しいです。
(もちろん、せっかくなので、ついでに天井裏を掃除したり、断熱材を充填したりすることもあります)
 

 構造補強の考え方については、以下のページを参照ください。弊社専務(荒木智)がわかりやすく解説しています。
五人の建築士が耐震調査を軸に徹底チェック(『住まいあれこれ』より)
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