古民家の再生 茅葺屋根の民家
京都市内では珍しくなった茅葺民家。
今では、年に数回利用するだけですが、お父様の生家です。
いつ帰ってこられても安心して過ごせるように、構造からしっかりと直します。
民家のリノベーション 1) 施工
茅葺屋根は、近年鳥や動物が萱葺きを破損することが度々ありました。特にあらいぐまの被害が大きく、悩みの種です。
内部は、細かく仕切られていた部屋を大きなリビングダイニングにするため、一旦解体します。
天井裏に残されたアライグマの沢山の汚物なども綺麗にします。
合掌造りの小屋裏がみえます。腐朽した柱や梁は、入れ替えたり継手を付けたりして、修理をします。
天井板も部分的に新しくやりなおします。
電気配線等も、全てやり直しです。
間取りを変えない和室は、養生をします。
再利用する天井板や構造材は、灰汁洗いをしていきます。
民家といえども、暮らしやすくするために、気密性を上げています。煙出しを枯竹で塞ぐのもそのためです。
新設した構造材は、違和感がないように納めていきます。
大壁にしたら楽なのですが、建物の雰囲気を守るために、既存と同じような材料を使い、真壁で納めていきます。
民家のリノベーション 2)竣工
道路からみた外観です。
茅はかなりの面積を補修しています。
昔ながらの外観をそのまま残しています。
広大なお庭に面する縁側です。
古い建具はそのまま再利用しています。
玄関から入ってすぐの取次間です。奥の和室越しにお庭がみえます。
壁は荒壁聚楽土仕上、湊紙張です。
和室の垂れ壁を撤去し、大きなリビングを作っています。
天井板はすべて新調ですが、あえて色を変えています。天井にダウンライトを埋め込んでいます。
和室だった時の欄間の古い硝子障子は、そのままアクセントとして残しています。
建具を外し、垂れ壁を小さく作り変え、広い空間を実現しています。
構造対策として、部分的に袖壁を作っています。
ダイニングの床板は、杉板を古色に塗装しています。
雨が直接あたる濡縁を通っていくWCです。大きなお庭に面しています。
床板・左官壁など一通り直しています。
お庭の奥は小さな川を挟んでお寺の敷地になっており縁側に座っているとすごく静かで何もストレスが掛かりません。
京都市内においてこれほど静謐な環境はなく、とはいえ地下鉄の駅まで徒歩15分程度で行けるとは、この環境からは考えられないほどの場所です。
別荘ではなく、お父さんの生家でありまた子供にとっては故郷であり、孫たちは京都の家という位置づけで活用し残していきたい建物です。
冬場は畳敷の場所でこたつに入って暖を取る、春や秋には庭に面するガラス戸を開け放ち広い庭に面しての縁側に座り、風に吹かれる。夏場はいくら茅葺屋根とは言え暑いのでガラス戸を締め切りエアコンにて空調を利かし快適に過ごせる、そのような生活ができるように工夫しました。