アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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京町家のリフォーム 50cm倒れた京町家

 もともとは7軒長屋だった建物です。この1軒を残して他はすべて建て替えられてしまいました。
 長屋は全体の構造で建物を支えるのですが、1軒になってしまうと、非常に弱くなり、大きく南に倒れてしまいました。
 もちろん建て替えも検討されたのですが、昔から住み続けた町家なので、思い切って改修することになりました。

50cm倒れた京町家 1) 施工

京町家外観
 外観/ミセノマ/ハシリニワ 

 左に大きく傾いています。表は下屋根の軒先まで増築されていました。ミセノマに見える側柱も、実は、倒れた柱の前に張り付けられた化粧柱でした。
 ハシリニワの建具は、あまりに傾いていて、ガラスが外れそうでした。

柱の倒れ
 建具の高内法から、柱の傾斜を計測する 

 昔の建具の高さは1730mmです。
 その内法で柱の倒れを計測すると18cmほどありました。大屋根までだと50cm以上傾いている計算になります。かなり倒れていて危険を感じたので、ヘルメット厳守で作業を行います。

側壁修理、いがみつき、根継
 側壁修理/いがみつき/根継 

 まず、柱の足元の腐朽部分を取り替え、雨が入ってこないように葛石を据え直します。
 そうしておいて、建物を元の方向に油圧ジャッキで押し、元に戻らないように仮筋交で突っ張ります。
 実は、この建物は奥行き方向の梁が極端に少なく、柱が固定できなかったので、杉板を下地に張って剛性を取りました。

柱の倒れ
 側壁修理/構造壁設置/外壁 

 側柱に側つなぎを入れ、壁の修理をします。
 あまりに倒れていたので、構造用合板で間口方向の壁を新設してある程度固めます。本来、京町家は揺れて持つ構造なので、あまり合板を入れるのはよくないといわれています。しかしながら、今回は、長年のひどい傾きの癖がなおらず、元に戻ろうとするので、それを防止するために合板で固めています。
 外部に張ってあった波板もバラバラになったので、これも張り直すことになりました。

50cm倒れた京町家 2) 竣工

平格子
平格子

 1F外観です。
 
 ごく普通の糸屋格子です。出入口は、本来は引戸だったと思うのですが、構造壁を増やす必要があったので、開戸にしています。  もともと、下屋の軒先いっぱいまで増築されていたので、この写真に写っている柱・壁・葛石などはすべて今回の工事で新調しています。

2階
2階

 2F外観です。
 
 こちらもごく普通の外観ですが、窓、長押、垂木!、瓦などすべて新調しています。下屋の瓦はベタ万にしています。
 壁は艶消しにしたかったので、漆喰調珪藻土シルタッチを塗っています。

ミセノマ ゲンカン
 ミセノマ/ダイドコから奥をみる 

 ミセノマは、大和天井を生かしたシンプルなつくり。出格子の内部は断熱のためにアルミサッシにしています。
 ナカノマも、大和天井を生かしましたが、壁はだいぶ状態が悪かったのと、予算を考慮し大壁で納めています。左側に台所がみえます。ここにも構造壁を増やしています。座敷奥にも壁を増やし、再び倒れることのないように工夫をしています。

ミセノマ ゲンカン
 座敷からミセを見る/2F表から中をみる 

 よみがえった座敷。この写真に写っている建具はすべて新調しています。もともと倒れていたので、まっすぐになると寸足らずになるからです。
 2FはPanasonicの新建材とビニールクロスで納めています。今回、構造改修にかなり費用が掛かったため、2Fは既製品でシンプルに仕上げています。

洗面・浴室
洗面・浴室
 今回の工事は、想像以上に建物の傷みが進んでいたので、少々心配でした。建物もぐらぐら揺れるし、屋根も野地板が薄くなって危険と隣り合わせでしたが、無事事故もなく、きれいに仕上げることができよかったと思います。
 リフォームという事で、柱を建てざるをえなかったり、壁を作らなければならなかったりと制約が多かったのですが、それでも、この思い出のある町家を残すことができ大変よかったと思います。
現場監督 小野 敏明 
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