古民家の再生 縁側のある民家IV
たくさんの和室が並ぶ大きな民家です。
京都市から重要景観建造物の指定をいただけたので、建築当初に戻す形でリフォームをすることになりました。
元の形に減築し、できるだけ古い材料を生かして改修しています。
現場を担当した大工は、森脇棟梁です。
民家のリノベーション 1) 施工
外部に足場を建て、後から造られた部分を解体していきます。タイル張りのお風呂やアルミサッシ、増築された台所などを解体します。
その後、昔の写真を確認し、元々あった葛石を復元します。とはいっても、今度はベース基礎を新設し、葛石が動かないように工夫します。
長年の風雨で腐食した土台や水板は取り換えます。腐った柱は根継をします。
お風呂があった部分はほぼ腐朽していたため、根継がそぐわない部分は柱を取り替えます。
2Fの縁側の敷框は、どうしても雨が溜まって腐朽していたので、取り換えました。木製建具はできるだけ残す方針となり、見習君に水洗いしてもらいます。
雨戸は腐朽した板は取替、枠は残します。
屋根はアスファルトシングル葺になっていたので、全てめくり、銅板一文字葺に張り替えています。
銅板屋根は、面積が広いだけでなく、蛤葺や、銅板鬼など役物が多くて大変です。屋根の妻側には蓑甲もあります。
左官は全面塗替え。今回、浅黄土で統一しています。
最後に塗装をして完成です。ここまで、着工してから一年近くかかりました。
民家のリノベーション 2)竣工
大屋根・下屋共銅板葺。下見板はピーラー。壁は浅黄土です。
玄関はほぼ昔のままに復元しています。正面の襖は、白い鳥の子紙に、白い型押しをしています。
いずれも、何気ない部屋ですが、建具は格子を修理し、出窓は敷框を接木しています。
天井は既存イナゴ天井板にダウンライト埋込。
手摺も傷んでいる部分だけ補修しています。
リビングは床暖房を敷設。絨毯はスミノエウールレックス。
開放的な縁側。床はピーラーで張替。建具ほぼ全て既存を補修しています。
大正硝子のゆらぎがなんともいえない趣があります。
押入の一部を水屋に改造しました。通し棚や吊棚は、作法に従い、壁を塗る前に後面を空かして設置。紙障子の向こうには照明を仕込んでいます。
WCはタイルが張られていたので、それらを撤去し、板張りに作り変えました。地窓が、昔の和式便器の面影を残しています。
鮟鱇の市販品はどうもゴテゴテと模様があって今一つなので、のり京板金さんに作ってもらいました。(実は、鬼も作ってもらっています)。
シンプルで美しいです。
実は、傾斜地に隣接する建物のため、法面からの水の侵入を防ぐためにいろんな工夫をしました。
特に力を入れたのは、やはり、銅板屋根です。ここまで大きな案件はやったことがなかったので、よい経験になりました。
今回は、近隣の方々のご協力が本当にありがたかったです。道路から建物までだいぶ離れていましたが、車を停めたり、私有地に材料を置いたりするのを快く許可いただきました。
これからも、もっともっと、このような建物を直し、1軒でも多くの民家を残したいと思っています。