北木石のある京町家
北木石上の腰窓
構想3年、お客様のご要望が多岐に渡り、建物全体に濃厚な工事があちこちにちりばめられた現場となりました。
打合せ当初から竣工まで、お客様のお考えはブレずに一貫されていたので、全体的なプランは早くに纏まったのですが、それらを実現するためにどう進めるのか、納めるのかについての検討にかなり時間を要しました。
現場を担当した大工さんは、足達 宗凡くんです。
京町家のリフォーム 1) 施工
床組みを全て解体し、傷んでいる柱や土台を取り替えます。
間取りが変わる部分には、基礎や構造体を新設します。全体のバランスを考えて、構造上必要な壁も設置します。
土台を据えているのは大工の粟津さんと造園工の松本さんです。
2Fの床梁は、新しく階段をつくるため、新設しました。
ミセノマの腰石は、本御影石か北木(きたき)石のどちらかだそうです。とても貴重な素材なので慎重に取り外しています。
ファサードの改修をしているのは、足達棟梁。ここに、腰石が挟まっていたとは・・・
腰石を新しい位置に据え直すため、あらかじめ御影石土台を作っています。
腰石の据付は、屋根が邪魔で大変でした。傍観しているのは、大工修行中の高倉くんです。
腐朽している柱を追掛で根継をしています。
だいぶ仕上がってきました。天井の米杉を先に施工してから、壁を仕上げていきます。
窓を造作しているのは大工の粟津さん。外側から仕事ができないところでだいぶ苦労して施工しています。
京町家のリフォーム 2) 竣工
建てられた当時の外観が復元されました。
腰石は大島石。瓦葺替。焼板張替。漆喰塗替。押竹取替。つば止め取替。
建物全体の塗装もベンガラ塗料(ワビスケ)でやり直しました。
本玄関は昔ながらのしつらえ。横繁板戸+紙張障子を再利用しています。
土間がきれいに仕上がっていますが、給排水管敷設替のため、全てやりかえています。
火袋がきれいですね。手すりがみえていますが、ここは、以前はベニヤ張でした。
ベンガラ(わびすけ)と、天窓・漆喰壁のコントラストがきれいです。
襖を杉板舞羅桟戸に変えました。天井は米杉。床はブラックチェリー。
正面に見えるのは足元を透かしてすっきり見せたTVキャビネットです。
シンク右手の壁にさまざまなリモコン類を集めてみました。
その上には、白板があり、磁石でメモがひっつくようになっています。
遠くに座敷がみえます。「昔からあるようにみえる座敷」ですが、実は、リビングを広くみせるために、半間分縮めています。
縁側は、サッシ以外は昔の雰囲気を残しています。
階段は動線を考えて位置を移動しています。
2Fの座敷は構造や内装に手を入れただけで、ほぼ原形を残しています。
2Fは、既存の間取りを生かしつつ、個室も確保するという難題に取り組みました。
右手の空間は大きな共用のクローゼットです。
楢材の床板を通して張ることで、襖を開けたときにすっきりとみえるように工夫しました。
出来上がってみると、間取りが大きく変わったにも関わらず、違和感無く仕上がったという印象です。
この辺りはお客様が考えられた動線なので、これほどまでにスムーズにいったのかという感じです。
むしろ以前よりも自然な動線になったので、生活もより快適に過ごせるようになったと思います。
今回は、率直に言いますと、すごい手間が掛かってしまいました。
工事写真を見て頂いたらお分かりだと思いますが、各所徹底的に拘った納まりとなっております。
職人さんの作業内容が大変だったことはもちろんのこと、私も過去には無いほどの施工図を作成しました。
町家の改修工事で納まり図を作成するには、現況の寸法を測り、歪みと癖を理解して進めなければなりませんので、各所作製するのにかなりの時間と労力を費やします。
おかげで、満足のいく仕上がりになったと思います。