ファサードの復元

復元された板庇
増築され、タイルで覆われたファサードを、できるだけ元の状態に戻す工事を行いました。
建物も丈夫になり、一安心です。
現場を担当した大工さんは、牛田 秀樹くんです。

京町家のリフォーム 解体しながら元の状態を探る



改修前の外観をみると、戦後の建物のようです。大屋根の軒先まで約1m増築され、タイルで覆われています。
1Fの通し柱は撤去され、2Fは室内に表れています。
改修に際し、道路許可を取って外部に作業用足場を組みました。



元々柱が建っていた場所に再度柱を建てます。
1F天井裏に大きな鉄骨トラス梁が入っていましたが、建物が北側に傾いていたので、補強用の袖壁を2枚作りました。
布基礎を立ち上げるわけにはいかないので、ベース基礎を打ち、葛石を据えます。


カシキ組はほぼ残っていましたが、垂木は軒先でカットされていたため、やむなく新しく取り替えます。
2Fの内装も、壁・天井共真壁に作り替えました。
屋根は軒先だけ化粧野地板になります。カシキ組の奥は杉の五分板を張っています。
京町家のリフォーム 竣工


完成しました。ここまで着工からほぼ3ヶ月かかりました。できるだけ伝統的な意匠を踏襲してリフォームしています。
大屋根;化粧野地+化粧垂木新調、カシキ:天井裏に隠れていましたが、化粧板は3枚張替。
2F壁:付柱、付長押、下屋:一文字小瓦、木熨斗、前包、須覆復元、通し腕木取替。
1F壁:腰壁鎧張、格子上台輪、はぶき新調。

建具:1Fは子持3本格子戸。3枚の建具が袖壁のなかに入って軽自動車が停められます。
電力量計、ガスメーターは、格好が悪いので、南側に新設した袖壁側に移設。
樋は銅製。土間は大磯2分3分洗い出し仕上。
エアコン室外機は縦格子で隠しています。


1F玄関は、竿縁天井、壁EP塗装仕上、床モルタル洗い出し
2F和室は、笹杢大板天井、壁ジュラックスC塗、藁サンド畳新調。
1Fは普通のスリ硝子ですが、2Fは木製隅丸建具に真空ペアガラスを入れ、内障子も付けました。外も内も真壁に見えるようにしたので、壁厚が220mmと少し分厚くなりました。

施主様がご高齢だったので、改修するかしないかだいぶ悩まれましたが、思い切って元に戻すことになりました。
京町家の外観といっても、最近の観光ブームで、白壁とベンガラと格子があれば何でもOKな時代です。しかしながら、せっかくなので、駐車場部分以外は、伝統的な意匠を再現することにしました。
工事を通じて、京町家に対する理解を深めていただく事ができ、本当によかったと思います。