京町家のリフォーム 電線の多い京町家
空気抜の中に網張。玄関踏込石の下に接続枡。
路地の中にある長屋建の京町家です。長い間空き家だったので、路地奥への電気配線が、軒下を経由していました。
もともと1列2室型の小さい町家だったと思うのですが、何度も改修をされたり増築されたりして、昔を偲ぶことはできません。
でも、なんとか外観だけでも元の状態に戻そう!ということになりました。
現場を担当した大工さんは、職長の西川君です。
京町家のリフォーム 1) 施工
表に450mm程増築されてモルタル塗りの外観になっています。屋内は、昔の面影は無く、玄関に階段を移設されたり、部屋全体がプリントベニヤで張られていたりと、何度も改修されていました。
1Fの内装全体を解体すると、ゲンカンニワとオクノマの天井は綺麗な大和天井がでてきたので、表しにすることにしました。裏庭の排水も取るため土間を深さ800mmほど掘り返しましたが、後で沈下しないように土を突き固めています。
裏庭から雨水が浸入しないようにするため、葛石を新しく布設しています。写真にはありませんが、表格子下も玄関内も見えるところは全て葛石を据え直しました。
傷んだ柱は全て取り替えたり、根継をしたりしています。長屋の隣のお住まいが、「部屋内に壁を増設して筋交を入れている」ため、こちらもある程度固めることにしました。土間の防湿のためにコンクリートを全面に打ちます。
根太を入れた段階で防蟻剤を噴霧します。古い梁にも注入します。
西隣とのプライバシーを守るために遮音シートを全面に張っています。2Fは天井高が低いため勾配天井にして丸太を一部見せる事にしました。
屋根は土葺でしたので、全て撤去し、野地合板補強の上、引掛桟葺としました。
京町家のリフォーム 2) 竣工
1F外観です。
ごく普通の糸屋格子です。出入口は、本来は引戸だったと思うのですが、構造壁を増やす必要があったので、開戸にしています。
もともと、下屋の軒先いっぱいまで増築されていたので、この写真に写っている柱・壁・葛石などはすべて今回の工事で新調しています。
玄関の壁はシルタッチフラット(漆喰風珪藻土)、土間は黒龍石洗い出し。式台と敷框は松材を砥粉を混ぜてウレタン塗。建具はあらき古材倉庫からの再利用品です。
平格子裏はYKK内付アルミサッシ。内付は外観を重視する京町家ではよく使うのですが、だんだんメーカーも限られてきました。
LDKの天井は杉板ワトコ塗+大和天井ワビスケ塗。床は楢ウレタン塗装品。押入があった場所にキッチンをすえました。
庭といっても、もともとトタン屋根で覆われていて、光がまったく入らなかったのですが、今回の改修で元に戻しています。犬走りは山ビリ洗出。庭はたん鞍石+砂利敷で植栽は小さくしています。壁は焼板張女竹押です。
道路側の窓はスリ硝子にしています。町家の雰囲気がでるからです。右の舞羅戸の中に階段が入っています。
玄関は古建具を使ったので、建具の高さが1730mmしかありませんが、奥の洗面に通じる硝子板戸は新調したので高さ1900mmにしています。
1Fは真壁にしましたが、2Fはコストを押えるために大壁+ビニル壁紙にしています。それでも、勾配天井にして部屋を広く見せたり、格子をつけて雰囲気をよくしたりしています。
洋室は壁1面だけ鴬色の聚楽調にし、路地から窓がみえないように代萩の簾をつけています。
和室は天井を朱色の和紙調にしたので、部屋が引き締まりました。
でも、路地の方々がみな親切で大変助かりました。いろんなかたのご協力で外壁も張り替えることができ、一安心です。