京町家の構造改修II

3棟の傷んだ京町家。最初に現場調査をしてから7年経過し、ずっとそのままになっていたのですが、ようやく着手する運びになりました。歪んで傷んだお住まいの構造を直すところまでが当社の仕事です。
現場を担当した大工さんは、足達棟梁です。
京町家の構造改修 1) 施工

近所の方に迷惑を掛けないようにトタンで囲います。

内部を解体します。1Fはほぼ土間になります。

絶妙のバランスでした。

柱の足元を仮繋ぎし、人力で掘ります。大工の仕事です。

新しく据える一つ石が沈まないようにします。葛石の下も同様にします。

柱の足元が殆ど腐朽していました。相欠き臍(ほぞ)継です。

新しい材料で繋いでます。井戸引きも入替。上手くできました。

腐朽が酷い部分は、思い切って取り替えます。足達棟梁です。

左官下地です。殆ど大工の新人の仕事です。このままでも綺麗。

向こう側から荒壁を塗りつけました。こちらからも塗ります。

左官屋の猪原女史。この現場で半年以上延々と塗ってました。

ごろんぼが腐っていて、かなり危険な状態でした。腐朽部分をカットし、新しい丸太を加工して2Fから吊りあげています。
組みあがったら下に柱を建てます。不可能を可能にする大工の技です。

腐朽した柱や梁を次々と取り替えていきます。

焼板施工前に透湿防水紙張。築山棟梁です。

板を張るのに、ネコ土台の隙間から足場板を挿入して作業台に。
京町家の構造改修 2) 竣工

1Fは平格子、玄関建具を復元。2Fはお多福窓。漆喰+べんがらくん塗。下屋は一文字軒です。

外部は焼き杉板張。疏水に面する部分は、許可を取って足場を組みました。

新旧の木材が複雑に絡みあっています。大工さんの技術が光ります。壁は荒壁土フルイ仕上。

登り丸太を新設しています。斜めの部材に束を斜めに加工して屋根を受けています。

何もしていないように見えますが、大変な手間をかけています。
躯体の歪みや沈下を直し、一つ石や延石の下にベース基礎を新設、腐朽した柱は根継し、撤去したホゾ穴には埋木をしています。

躯体の状態が悪く、新設した、柱や梁が林立しています。
屋根を残しながらの修理には多大な時間がかかりました。

元々水廻り棟があった部分です。
壁は傷んだところを部分的に補修しています。

大きな倉庫として使われていた建物です。
右手の柱や壁は傷みがひどく、白蟻が梁まで上がっていたので、全て新調しています。

瓦は全て葺き替え、壁は全て小舞→中塗→上塗として仕上げています。

梁の上に束が乗っています。屋根を少し上げ、構造を直してから、屋根を下げて臍を納めています。

左側から、旧倉庫棟、奥に母屋、右手に離れの3棟です。
一年強かけて、ここまで来ました。
特にこだわったのは、今後100年経っても、地震が起きても大丈夫な基礎と構造だ。
葛石や一つ石の据え直しは、解体屋さんや基礎屋さんではできない。腰に負担がかかる本当に大変な作業。感謝に耐えない。
こうしてまた、町家が3軒蘇った。
