数寄屋建築(茶室他) 文人画家のお住まい

気温も熱量も暑い夏を経験しました
明治大正期に文人画家だった方のお住まいに使われていた材料を一部再利用して新築をする事になりました。
増築・改修を繰り返された建物でしたが、広さはそのままに、屋根の納まりが良いように直しています。
現場を担当した大工さんは、牛田君です。
1) 施工 ~ 古い材料を使って

ここで庭を愛でながら絵を描かれた部屋です。
この意匠を守りながら、新築する事になりました。

古い地板の裏桟を加工しています。
ごろんぼや長押なども一部再利用する事になりました。
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上棟が無事完了し、破風を取り付けているところです。
総化粧の建物なので、一つ一つの部材に気を使います。

工事の早い段階で地板を所定の場所に納めます。
後で動かせない柱と柱の間に入れるためです。
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あらかじめ、垂木(杉小丸太)を差す穴を加工したうえで取り付けます。
こうした準備は全て当社工場で事前に行います。

隅木の下にみえる古い木材は、取り置きされていた軒桁です。このように再利用する部材があり、それに合わせて建物の大きさを決めるため、着工までに時間を要しました。

杉の一枚板を取り付けています。
これも柱と柱の間に切り込んで入れるため、工事の始めの方で納めています。

左上にごろんぼが1つ見えています。
このごろんぼは再利用なのですが、天井を張ると見えなくなります。
この丸太に合わせて登り梁を加工しています。

複雑な形状の平屋の屋根は職人技の見せ所です。

設計士さんの発案で、茶室の入口に稲穂を張り付けています。
2)竣工 ~大工さんの技術を生かして

足元は御影石。
柱は地桧、垂木は杉小丸太、水板は地杉。
瓦は軽量一文字葺です。
壁は聚楽土と深草土をブレンドした左官仕上です。木部には白木用の浸透性保護剤を塗布しています。

地板、落垣、床柱などは再利用しています。
天井は、尺2幅の赤杉中板目材を浮造り加工しています。
右手の塗りまわしの明かり窓の曲線は、既存建物の写真から型取しました。

縁側は桧縁甲板。
床框は既存再利用しています。

この部屋は比較的古い素材が沢山生かされています。
天井、長押、欄間、床柱などです。
この長押の寸法に合わせて部屋の大きさを決めています。

先ほどの部屋を反対側からみています。
正面襖上部はエアコン吹出口です。

広間に続く廊下です。
天井の竿が6m以上続いていますが、目立たない所でイスカに継いでいます。

縁側外部です。
下地窓には煤竹を使用しています。

先ほどの窓の内部です。
杉の丸太と壁が綺麗に納まっています。

大工さんの一番楽しい部分です♪
いつまでもみていたいです。

元々の屋根形状を踏襲しつつ、明らかに増築されていた部分には手を加えて自然な形にみせています。
瓦の割付が複雑で、瓦屋さんの腕が生かされています。
特に、保管されていた古材を調査し、材料の形状から建物の大きさを割り出す作業は謎解きのようで、印象に残っています。
今回はじめて大型現場で仕事をさせていただいたのですが、ゼネコンの安全管理など学ぶことが多く、大変勉強になりました。 ありがとうございました。