5.瓦葺替工事の適正価格
屋根の葺き替えというと、大変費用がかかるというイメージがありますが、野地そのままで、瓦だけを土葺から引掛桟葺(土を使わない工法)に葺き替えるのであれば、以下の金額が目安になります。
A:全面葺替の場合(大屋根・下屋 面積100m2) | ||||
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名 称 | 数量 | 単位 | 単 価 | 金 額 |
養生・小運搬 | 1 | 式 | 30,000円 | |
瓦土メクリ | 100 | m2 | 2,500円 | 250,000円 |
残土ガラ処分 | 100 | m2 | 1,600円 | 160,000円 |
下葺流し桟 | 100 | m2 | 800円 | 80,000円 |
瓦葺(大屋根、53形、万十軒瓦) | 90 | m2 | 9,000円 | 820,000円 |
瓦葺(下野、80形小瓦) | 10 | m2 | 15,000円 | 150,000円 |
瓦葺(一文字瓦、前垂1.5寸) | 5 | m | 15,000円 | 75,000円 |
雑費・諸経費 | 1 | 式 | 150,000円 | |
合 計(A) | 1,715,000円 |
単純な切妻屋根で、表下屋のみかっこよくみせるために、小瓦葺&一文字軒とした場合の見積もりです。
棟の積み替えも含まれています。もし、安くあげるのであれば、表下屋も大屋根と同じ瓦にすれば、差額分安くなります。また、軒先の瓦は万十軒の場合、特別な費用はかからないので、一文字軒をやめれば、上表で6万円分安くなります。
もちろん、瓦の種類によってもこの値段は変わります。耐寒瓦では割高に、板金軽量瓦だと割安になります。
しかしながら、実際には、
- 箱棟、降り棟、袖瓦、風切瓦などの役物がついている。
- 特殊な鬼瓦、獅子口、鴟尾などで棟収めされている。
- 隣家が接続していて、妻側に水切板金が必要。
- 屋根に入隅があり、谷樋板金が必要。
- 換気棟、硝子瓦など住み易い工夫をしたい。
といった場合は、別途料金がかさむことになります。
なお、雨漏りがひどく瓦の下の野地板が傷んでいる場合は、大変費用がかかります。
長い間雨漏りを放置しておくと、どんどん瓦がずれてしまい、かなり広範囲に蟻害・腐朽がみられることもあります。
特に、垂木が曲がって軒先が大きく垂れ下がっている場合は、大変です。
B:下地も半分ほど傷んでいる場合 | ||||
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名 称 | 数量 | 単位 | 単 価 | 金 額 |
A工事合計金額 | 1 | 式 | 1,715,000円 | |
足場、シート張 撤去・損料共 | 200 | m2 | 1,200円 | 240,000円 |
雨養生 瓦シート張 | 1 | 式 | 50,000円 | |
野地メクリ 処分共 | 100 | m2 | 2,000円 | 200,000円 |
破風取替(2面化粧) 大工手間・釘金物材料共 | 40 | m | 10,000円 | 400,000円 |
野地板貼(鼻先化粧) 全体の5割 | 50 | m2 | 5,000円 | 250,000円 |
垂木取替(鼻先化粧) 全体の5割 | 50 | 本 | 3,000円 | 150,000円 |
化粧木部色あわせ塗装 | 50 | m2 | 3,000円 | 150,000円 |
軒樋・竪樋取替 既存処分共 | 25 | m | 3,000円 | 75,000円 |
雑費・諸経費 | 1 | 式 | 110,000円 | |
合 計(A+B) | 3,340,000円 |
上記の金額は下地が半分ほど、破風(妻側の瓦のすぐ下についている木材)が全面的に傷んでいる場合で、だいぶ長い間雨漏りを放置している場合に相当します。
もし、早めに手当てしている場合は、ここまで費用がかからない事のほうが多いです。
また、樋も全面的に取替えになっていますが、ビニールの場合は、色はあせてても、勾配を取り直して再利用できる場合もよくあります。
さて、ここまで傷んでいる場合は、土が屋根裏に落ちて、2F天井裏が埃だらけになっているはずです。
そのまま屋根を塞いでしまうと、二度と清掃することができなくなります。
また、屋根裏に自由に入れる状態なので、金物補強や断熱、2F天井のつりなおしなどを一緒にしたらお得です(どんどん費用がかさんでしまいますが…)。
C:小屋裏追加工事 | ||||
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名 称 | 数量 | 単位 | 単 価 | 金 額 |
B工事合計金額 | 1 | 式 | 3,340,000円 | |
仮設(足場板敷および2F天井突張補強) | 1 | 式 | 30,000円 | |
小屋裏バキューム清掃(2人2日程度) | 80 | m2 | 1,500円 | 120,000円 |
小屋裏 構造材金物補強(1人2日程度) | 80 | ㎡ | 1,000円 | 80,000円 |
2F天井板吊り直し | 3 | 室 | 30,000円 | 90,000円 |
断熱材充填 グラスウール24kg相当 150mm | 80 | m2 | 1,500円 | 120,000円 |
雑費・諸経費 | 1 | 式 | 35,000円 | |
合 計(A+B+C) | 3,815,000円 |
かなりの金額になってしまいました。(^^♪
ただ、実際にはここまで施工することは稀です。誰か住んでおられるなら、あちこちの天井裏から雨漏りがする前に気がついているはずでしょう。(^^ゞ
実際には、この金額と同じくらいかけているのに、瓦の葺き替えしかしていないケースや、瓦の葺き替えをしていないのに、なぜか、数十万の費用を請求される事もあります(雨漏りがきちんと直っていないのにです)。それだけ、『瓦葺替』の飛びこみセールスが多く、まただまされやすいともいえます。
『瓦葺替』はおいしい商売なのには理由があります。
- 屋根には普通のぼらないので、瓦を蹴飛ばして写真をとっても施主にはわからない。
- 屋根が痛んでるといえば、家全体が痛むようなイメージになり脅かしやすい。
- 屋根の上で何をやってるかチェックされない。
- 瓦をめくってしまえば勝ち。下地も痛んでたといえば追加料金も取りやすい。
等々……
いろいろ材料には事欠きません。(^^ゞ
私が実際に経験した事例をあげてみたいと思います。
なお、特定商取引に関する法律が平成20年に改正されてから、訪問販売でのトラブルは激減しています。これは、一般的な価格の2~3倍のぼったくりをするケースは陰を潜めたことを意味しています。実際には、だまされていることがわからないケースもありますので注意しましょう♪
《事例1》
ある日いきなり玄関のベルを鳴らす音が……
「近くのお宅の屋根を直している、○○ホームサービスの者です。現在、屋根の無料点検サービスキャンペーンを実施しております」と、セールスマン。
「ちょっとすみません。失礼します」といい、いきなり屋根にはしごを掛けて昇りだした。
しばらくして、セールスマンが屋根から降りてきた。
「奥さん大変いい瓦を使っていらっしゃいますねえ……」
「いえいえ、ありがとうございます……」
「でも、ちょっとこれをみてください」セールスマンの手には、i-padでとった写真が数点。棟がめくれている写真。瓦が割れている写真。瓦がずれている写真……。
「ほんとねえ。でも今は雨漏りはしてないけど……」と奥さん。
「今はそうですね。でもこのまま放っておくと、瓦がどんどんずれていきますよ。今はいい接着剤がでてます。これ以上瓦がずれていかないように、早めの手当てが必要だと思います。雨漏りがしてからでは、家が痛んでしまい大変なお金がかかってしまいますよ……」とセールスマン。
「今は特別キャンペーン期間中でお安くなっております。そうですねぇ……。お宅の場合ですと、瓦の補修はほとんど必要ありませんので…」電卓をたたいて、見積を作る…。「120万でできます」
ここで、息子さんから、弊社にお電話がありました。
実際に私が見にいったところ、別に問題のない屋根で、痛んでいる瓦を差替え、棟を積みなおしても8万円程度ですむ状態でした。
《事例2》
弊社がいつも手入れをしているお施っさんの自宅に、瓦葺替のセールスマンがやってきた。
いつも、家の具合が悪くなったら弊社の職人や下職が修繕にいってるお宅です。
「あら、アラキさんとこの瓦屋さんですか??」と奥さん。
「ええ、この近所まできましたので、点検に伺ったのですが……」とセールスマン。
「別に雨漏りしてないわよ」
「ちょっと、見せてもらえますか……」とセールスマン。
そのまま屋根にのぼって、点検を始めた。
「あちこちで瓦にヒビが入ってるようですね。家のためにも今のうちに全部葺き替えたほうがいいと思いますよ」
長いつきあいで、弊社を信用いただいていたので、いつも「職人の手間と材料がかかっただけ頂戴」しているお施っさんです。そのため、特に見積を取らずにセールスマンに工事を依頼してしまいました。
その後、瓦職人がきたものの、瓦を全部めくった後、シートを掛け、毎日屋根にのぼってなにかしているようなのですが、ぜんぜん工事の報告がありません。しかもいつもの瓦屋さんと違う……。
おかしいと感じたお施っさんが弊社に電話を掛けてきました。
びっくりした担当者が現地にいってみると、職人は屋根の上でタバコを吸って時間を潰しているではありませんか!!!
しかも、めくった瓦はほとんど痛んでいません。
直ぐに職人を屋根から下し、営業マンを呼び、交渉した結果、職人の手間代だけ払って帰ってもらいました。
(一般のご家庭では、屋根の瓦を降ろされてしまったら、業者のいいなりになるケースが多いと言われています。それだけ、かかりつけの工務店が無くなっているのでしょうか……)
他にも、瓦葺替にまつわるトラブルは数多くあります。中には、『下屋だけ30m2葺き替えて350万円かかった』という方もいらっしゃいました。皆さんも充分気をつけてください。
瓦が痛んでいる場合、弊社では、「お金をかけていいかどうか」をまず聞きます。
本当に悪い場合はもちろん葺き替えますが、将来増改築の予定があるとかいう場合は、少々無理をしても応急処置で安くあげるように心がけています。
(もちろん、応急処置なので、大雨のときは雨漏りの危険があります)
D:応急処置の場合(瓦一部差替・補修のみ) | ||||
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名 称 | 数量 | 単位 | 単 価 | 金 額 |
瓦差替 手間共 | 30 | 枚 | 1,500円 | 45,000円 |
瓦補修 シーリング共 | 1 | 式 | 10,000円 | |
瓦積替 ルーフィング差込 | 1 | 式 | 20,000円 | |
土 漆喰 | 1 | 式 | 15,000円 | |
雑費・諸経費 | 1 | 式 | 10,000円 | |
合 計(D) | 100,000円 |
弊社では、いつもお願いしている瓦屋さんに、「すまんけど、簡単にやって! 10万円しか予算がないのよ! その金額で収まるようにお願い」と言います。(^.^)
普通はそれでやってくれます。
応急処置でできないようなケースや、あまりにも瓦が痛んでて、予算を超える場合は事前に教えてくれるので、お客さんにお伝えして了解をとります。
もし、屋根が心配ならば、近くの工務店さんか、瓦屋さんにお願いするほうが無難だと思います。
「セールスマンの人件費も見積もりに入ってる」ということを。また、「瓦屋さんが直接まわることはない」ということを覚えておきましょう。だいたい営業マンのみの会社で、契約したら下請けに丸投げという場合がほとんどですから……
参考にしていただければ幸いです。