古家を購入される方へ
最近、弊社のHPをご覧になられて、
『古家を購入したんだけど、いくらくらいで直せますか?』
というお問い合わせをたくさんいただくようになりました。
これは、大変嬉しい話なのですが、家の状態がわからないのに、なんとなく気に入って買ってしまったというので悩んでおられる方がたくさんいらっしゃいます。
家をというのは、一生に一回しかないほどの大変高い買い物です。そこで、古い家を買われて後で後悔されないためにも、ここで少しアドバイスをしたいと思っています。
1.全体の予算の割り振りを考える
たとえば、今手持ちの資金が2,000万円、銀行から3,000万円借りるとし、合計5,000万円で夢のマイホームを計画するとします。
この時全体の予算を、以下の3つに分けて考えていただくことをお薦めします。
- 古家購入費・・・・・・不動産屋さんに払う金額
- 古家改修費・・・・・・工務店さんに払う金額
- 動産購入費・・・・・・家具や電化製品を購入する金額
(もちろん、税金や引越費用も必要ですが・・・)
この割り振りを間違えると、かなり辛い結果になります。よくご相談を受けるのは、『とても良い物件があったので、手に入れたんだけれど、あと500万円しか残っていないの・・・。これで、希望どおりに直せるかしら・・・』といったケースです。
また、『とても良い輸入家具があるので、今家具屋さんで預かってもらっているの・・・。それと、壁掛テレビも買いたいの。後500万しかないんだけど、それが入るように間取りを替えれるかしら・・・』といったケースもあります。
なんでもバランスが大切です。あまりに住まいの手入れにかける予算がないと、結果として良い仕事をすることはできません。いきおい、「まけて!」と言われるのですが、「不動産屋さんには何千万も指値で払っておられるのに、なぜ、職人さんの手間を削ろうとされるのだろう・・・」と悩む結果になります。
個人的な意見ですが、
- 何度も改造を重ねておられる痛んだ古家を安く買い、高い費用をだして全面改修をする
よりは、 - ほとんど改造していない、状態の良い家を買い、少しだけ費用をだしてきれいにする
ほうが、同じ総費用で、よりオトクだと思います。
2.古家の価値を見定める
古家を買おうと思ったら、まず、物件を見に行く事になるのですが、売り主は、できるだけ高く買ってもらおうと必死ですから、できるだけ掃除をし、家の状態を良く見せるよう全力投球します。
そこで、いろいろチェックをするわけですが、一生に1回の高い買い物ですから、遠慮しないで質問されることをお勧めします。
- 屋根の葺き替えは最近されましたか?
- 雨漏りした事はありますか?
- 増築は何回くらいされましたか?
- 白蟻の被害はどうですか?
- 排水管が詰まった事はありますか?
- 電子レンジを使っている時に、電気が切れることはありますか?
- 隣近所にはどんな方がお住まいですか?(これが意外に重要)
等々・・・・・・
特に屋根が傷んでいる場合は、かなり費用がかかります。野地板も変えないといけない場合、百万円以上かかる場合もありますので、注意しましょう。
また、自分でチェックすることも必要です。
- 屋根瓦は暴れてないか
- 天井に雨染はないか
- 柱はなんとなく垂直か(建具がちゃんと閉まるか)
- 外壁・基礎に致命的なクラックが入ってないか
- 樋にちゃんと水が流れているか(できれば雨の日に確認)
- 屋根裏の状態はどうか(金物の有無・仕口の状態・断熱材の量)
- 床はふかふかしていないか(ジャンプしましょう)
- 階段はあがりやすいか
- 水は勢い良く流れるか(排水も同様)
- 床下は濡れていないか(床下収納庫を開けましょう)
- お隣との境界のマークはあるか(これも意外と重要)
等々・・・・・・
できれば、自分ひとりではなく、『買っても買わなくてもどっちでもいい(冷静に判断できる)第三者』にも一緒に見てもらいましょう。友達でも、息子でもいいです。自分では、いいと思っていても、いろんな気づきを教えてくれます。
また、売主や不動産屋さんが目の前では、なかなか気が引けてできない事(天井裏の点検等)も、二人いれば簡単にできます。
さらに、欲をいうと、建築に詳しい人に現場を見てもらうことができればさらにベストです。工務店の人でなくても、瓦屋さん・左官屋さん・電気屋さんでもOKです。そうした、少しでも知識のある人が見れば、家の改修費用が大体わかります。あまりひどい状態の家ですと、更地の方が得かもしれません。
さて、住まいの痛み具合がわかったら、値段交渉です。
新聞の折込チラシをみれば、購入予定地域の坪単価が大体わかります。
古家の場合、家の価値はほとんどゼロに近いため、『不動産屋さんの希望価格=土地の価格』と思って間違いありません。
通常の土地の価格から、
- 間口が狭い
- 前面道路が狭い
- 墓地・葬儀場に近い
等の理由があると、更に下がります。また、古家の状態がほんとうにヒドイ場合、土地の価格から解体費用を差し引いた金額で売りにだされる場合もあります。
また、
- 持ち主がどうしても売りたい(早く現金が欲しい)場合は安く
- 売っても売れなくてもどっちでもいい場合は高くなります。
不動産というのは、定価がない商品です。売主と買主の間の交渉で値段が決められるものです。ですから、仮に3,000万円で売りにだされた物件でも、自分が2,500万円の価値しかないと思ったら、正直に「2,500万円だったら買う」と宣言します。
(いくらまで負けられます?というのでは、なかなか上手くいきません)
どうしてもその物件が欲しいわけではない場合、自分の希望価格を言って、呑んでくれたらしめたもの・・・という、欲のないスタンスで接するのをお勧めします。これで、100万円でも安くなれば、その分でよりグレードの高い改修ができたり、大型液晶テレビが買えたりするわけです。
他の人が買うことになってしまっても、「縁がなかった」とあきらめるのが肝心です。
3.古家の改修費を見定める
さて、購入予定の住まいが決まったら、どのくらい改修するかを考えなければなりません。
- 当面改修が不要なように徹底的に直すか
- できるだけ費用をかけないで最小限だけ直すか
を決める必要があります。
ただ、後者の方を選ぶとしても、給排水・電気・ガス関係は、素人ではなかなか修理できないため、入居前に手入れをされたほうがよいと思います。
また、雨漏りがひどいと、他にも痛みが広がりますので、屋根や外壁の補修もしておいた方が良いでしょう。
予算がなければ、休みの日にじゅらく壁やペンキの塗替を自分でやれば、愛着も湧くし、一石二鳥ではないかと思います。(^^ゞ
また、
- 自分の住みやすいように間取りを変えるか
- 住まいに自分をできるだけ合わすか
も考える必要があります。
注意した方が良いのは、最初はトイレだけ直してといっておいて、後から後からここもやって!と頼むと、余分に費用がかかるので、工事を始める前に、やるところとやらないところをよく見極めをしておく必要があります。
できれば、購入前に工務店さんと相談して、自分の希望を全部お話しし、いくらくらいで直せるかを聞いておくと、物件購入判断に役立つと思います。
そもそも、日本の場合、築10年以上経過した建物の価値はほとんどありません。状態がよければ「タダで買った物件を300万円でなおす」こともできますが、状態が悪かったら「新築するほどかかる(場合によっては解体費が余分にかかる)」こともあります。
新築するほどかかっても、柱・梁等が良いものの場合、「建売を買う値段で古民家に住める」のでヨシとしたら・・・・・・と、思うのですが、日本民家再生協会のアンケート調査でも「改修費が思った以上にかかった」方が多いので、少し改修費用に余裕をもたせたほうが良いかもしれません。
というのは、在来浴槽は大抵床下が腐っていますし、大丈夫に見えるボイラーもかなり古くてあと数年で潰れてしまう状態かもしれません。
また、きれいそうに見える部屋でも、隣がリフォームしてかなりきれいになったら、工事してない部屋の粗が目立つようになります。そこもやり直して!といったら次々とやり直す部屋が増え、しまいに全部屋やり直しになってしまう・・・という事例も経験しました。(^^ゞ
改修には、人件費がそこそこかかります。そのため、改修費用を少し余分目にみておいたほうが良いと思います。特に間取りの変更は手解体になり、レッカーでぐしゃっとつぶす以上に費用がかかりますので、注意しましょう。