京町家を移築したい方へ
解体される予定の京町家を引き取り、自分の敷地に建てたいと思われている方、是非ご一報ください。
当社では京町家を残す活動を続けていますが、残念ながら毎日2軒のペースで解体が進んでいます。
解体されたら、「産業廃棄物処理場行き」です。
1軒でも救うためお力を貸してください。
京町家を引き取るための諸条件
"改修"の場合は、既存不適格建物のまま工事を行います。
一方、"移築"の場合は、建築確認申請が必要になります。そのため、現代の建築基準法に準拠した建物にしなければなりません。
大きな問題が3つあります。
防火構造
京都市内中心部はほぼ全域が防火地域または準防火地域となっています(嵯峨野や岡崎など例外もあります)。
準防火地域内の木造建築物は防火構造としなければなりません。
隣家から1Fで3m以上(2Fで5m以上)離れていないと延焼の恐れがあるとみなされます。その場合は、外壁・軒裏などは防火構造、開口部は防火戸にしなければなりません。
そうなると、町家をそのまま移築する事ができなくなります。
ですので、どこでも移築できるかというとなかなか難しいです。
耐震構造
京町家は伝統木工法で建てられています。
また、借家普請の場合、木材を抑えて作られていることが多く、壁があまりない建物もたくさんあります。
そのため、耐震診断を受けると、壁のバランスが悪く、桁行方向(道路と平行)の壁が少ないため、必要な壁の量が「10%以下しかない」などという結果になる事も多いです。
移築をする場合、現在の耐震基準にあわさなければならないため、壁をたくさん増やさないと許可が降りない可能性があります。
特に、間口が狭くて、奥行きが長い場合は、壁量を増やすと、通路が確保できない事もあるので、注意が必要です。
長屋建て
立派な京町家の場合は別ですが、京町家の6割以上は長屋建です。
2戸1の場合は、2軒の間の壁が共用で繋がっています。3戸1や5戸1などの場合もあります。
こうした建物のうち1軒だけを移築しようとしても、構造材が繋がっているため、なかなか難しいです。
共有の壁は解体できないし、母屋や桁なども、お隣に延びてたり、お隣のがこちらに延びてたりしています。
そういう建物を1軒分だけカットすると、材料が足りなくなってしまいます。
長屋建ては「長屋全て」でない限りは、移築は難しいと考えて頂いたほうがよいかもしれません。
移築費について
京町家の移築には膨大な費用が掛かります。
解体だけでも、重機解体だと1週間でできるところが、1ヶ月以上かかることも多いです。いわゆる活けコボチをしなければならず、解体費が500万以上掛かる事もあります。
解体したら、そのまま組み立てればいいかというと、そうではありません。
改修跡が多い場合は、再利用できない部材もたくさん出てきます。
荒壁土も、長年の風雨にさらされ、足元が無くなっていることも多々あります。
移築後、伝統工法(石場建)にするのか、それとも在来軸組工法(布基礎)にするのかでも費用は大きく変わります。
前者はさらに費用がかさむので、どうするかはしっかりとご予算を考えながら検討を進めていく必要があるかと思います。