アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

町家探訪

10.庄屋 門脇家(続)

(鳥取県大山町)

白井 しかし、また、天井がドンと・・・ 高いですねぇ。
荒木 2900程ありますね。
白井 高い!!

白井 こちらの戸も綺麗な戸ですね。
荒木 そうですね。舞良戸っていうんです。桟は、一般的には横に入って建具が多いんですけど、ここは竪に入っています。おまけに細くて前が丸く仕上げてあって比較的珍しい意匠だと思います。また、舞良戸の敷居が畳より10cm程あがっています。
白井 最近は時代の流れでバリアフリーといわれていますが、これは逆に段差をつけているんですね。
荒木 向こうがお座敷でこちらが事務所として使われているためだと思います。お客さんを招く部屋と、プライベートな事務所とを、はっきり区別するために一段つけてあるんですね。

 門脇家に伝わるる家相図。
 これによれば、間取りの原型は、3部屋が3列並び、合計9部屋となっています。しかし、現在では増築され12部屋となっています。

白井 お庭に面した一番奥の間に来ました
荒木 結構、このお部屋は杉の綺麗な磨いた部分をだそうとあちこちに工夫がされています。長押にも天井の竿縁にも磨き丸太を割ったものが使われています。

白井 こちらの桃の可愛いのは何ていうんですか?
荒木 釘隠しっていうんです。桃の絵は、邪気を払うという言い伝えがあります。
白井 この長押の丸さと、桃の丸さがマッチしていい感じを出していますね。
荒木 柔らかさを表現するのには、こういう釘隠しがすごく合いますね。

白井 お庭にやってきましたけど、こちらはまたこじんまりした綺麗なお庭ですねぇ~
荒木 この建物の割りにはね(笑)。
白井 で、なんですが・・・池が反対にものすごく大きくて私はビックリしたんですけど。
荒木 この池はどこから水を・・?
門脇 阿弥陀川から引いています。昔はここの裏の方で田んぼを作ってましたので、その途中でここに引いてるんです。
 大山を源とする阿弥陀川は下流で枝分かれし、ここ所子地区にも流れ込んでいます。
 門脇家の屋敷内にも水路か巡り、農業用だけでなく生活用水や防火用水としても使われていました。

白井 これからは奥様の早苗さんにもお話を伺おうと思います。お願いします。こちらの、パッと見たら『お風呂かしら!?』って思うんですが、沸かすとろこも無いですし、どういった為のお風呂なんでしょうか? 奥様 元々ですね、このお母屋が建ったと同時にお母屋の重要な部分として作られたものなんです。お母屋の機能として藩主、及び藩主代理のお客が一番大切でしたので、その方の入浴の為のお風呂であったわけでございます。それはもちろん江戸時代の話しでございます。明治・大正・昭和と藩主の制度がございませんから途切れていった訳でございます。この家に嫁として嫁いできたものが、これで身体を清めて結婚式をあげるという風になっていった伺っています。

 雪隠。現代でいうトイレには、刀掛けのそなえがあります。

 文化文政の頃に作られた茶室、『静寿庵』です。
 茶室の天井は斜めの掛込天井と、平天井を組合わせた作りになっています。客人用の部屋には押入がないため、衣桁掛けがあります。現代でも法事などの際には僧侶の法衣を掛ける為などに使われています。

 門脇家は、かつて数十町歩の田畑を所有していた大庄屋でした。南に隣家するのは『南門脇家』と呼ばれる分家です。本家と道を挟んで向かい合うのが『東門脇家』。それぞれ趣きのある佇まいです。

白井  門脇さんのお宅、本当に堂々として素敵でした。あんな分厚さの、そして堂々とした茅葺き屋根を見たのは、うまれて初めてでした。そして、その屋根を支えるためのまるで空を大蛇が舞ってるかのようにいきいきとした沢山の梁。本当に驚いてばかりでした。

 ちょっと伺った話ですが、大山の方から『大山降し』という突風が吹いてお座敷の畳が二枚程ぶぁっ!!と持ち上がったことがあるらしいんですよ。驚きですよね。これだけ外壁もちゃんとあるのに・・・。それだけ風の力がいかに強いかってわかりますし、だからその自然の強さに対抗するかのように大きな屋根ととか梁が生まれたんだなって思いました。
 門脇さんのお宅は21世紀を軽くクリアして22世紀までも堂々といきのこっていけそうです

30分番組のため、一部省略して掲載しております。
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