蔵を18cm上げる
傾いた蔵を真直ぐに直した事例をご紹介します。
以前、弊社で母屋(京町家)を改修したのを気に入っていただいたお施っさんからの追加工事です。
長い間、物置になっていたのですが、せっかくの蔵が物置ではもったいないので、1Fは客間に、2Fは書斎に改造しました。
工事前に現場調査したとき、柱や床組を計測すると、左に大きく倒れていました。そのため、『足元が傷んでいるだろう』という想定で、基礎と補強に、重点的に取り組みました。
ジャッキアップの作業風景

1Fの外壁は、吹付タイルで固められ、2Fの窓は波トタンで塞がれています。昔の面影はありません。全体的に大きく左に傾き、18cm倒れています。これを真直ぐに直します。

内部の荷物を全て搬出し、1Fと2Fの床組を撤去します。建物が傾いた原因は地盤沈下と、蟻害による木材の腐朽だったことがわかりました。

イガミを直すために、新しく土台を入れます。18cm角の桧材を柱の下に据えつけます。

荒壁土の下にも土台を入れます。2本の土台が一緒に動くように寸切ボルトで固定します。

さらにその下に角パイプを並べ、少しずつあげていきます。壁土の厚みが35cmもあるため、慎重に作業します。

ジャッキアップすると、土台と基礎石の間に18cmの隙間ができます。その隙間に配筋し、コンクリートを打つ準備をします。

合板で型枠を造ります。コンクリートを流し込めるように、少し隙間を空けます。

傷んでいる柱も補修します。壁土を一部めくって、金輪継ぎをしています。今回は、ほとんどの柱が傷んでいました。

これ以上湿気があがらないように、防湿シートを敷き、土間コンクリートを打ちます。

石組が崩れないように、石組の内側に差筋をし、添基礎を立ち上げます。これで蔵の内部にロの字型に基礎ができることになります。

建物が安定したところで、仕上作業に入ります。建ったときの状態が蘇ります。
竣工し、蘇った蔵


建物全体と、妻側の外観です。
トタンは漆喰に、吹付タイルは焼杉板に変更しました。従来、庇の下とは違い部分に窓が開いていましたが、当初あった場所に戻しています。


正面2Fの窓と、蔵正面の入口です。
左官屋さんに役物を綺麗に復旧してもらいました。蔵戸は、開け閉め大変なので開けっ放しにし、内部に木製の引戸を設置しました。


蔵2階の内部です。
既存の小屋組をそのまま化粧で見せています。壁は漆喰塗。天井は漆喰クロス。床は楢材を使っています。出窓のようにみえますが、壁が分厚いためです。
今回はすんなりと壁土があがってくれましたが、それでもジャッキアップだけで2週間くらいかかりました。苦労しただけあって、素敵に仕上がって本当に嬉しいです。また、このような工事があれば是非担当したいと思っています。
