貸家の改修・リフォームI

長い間、学生さんの下宿に使われていた借家。
共同の流し・共同の浴室・共同のトイレ・・・
1ルームマンションに押され、住む人がいなくなったので、大規模にリフォームする事になりました。
少し、こだわった改修になっています。
今回は、弊社のお隣のNOMさんに設計をお願いしています。
学生下宿の改修


工事中は、いちいち図面で確認しなくてもいいように、いろんなところに張り紙をします。
間違いを防ぐためです。
左官塗りの続きの和室。欄間がある家も減ってきましたね。


和風の家はいいのですが、寒いのはどうも・・・という方が増えています。
やっぱり、気持ちよく住んでいただかないと、いくら良い仕事のお住まいでも気に入っていただけません。
いろんな断熱材が発売されていますが、環境・健康・価格面を考慮し、一番お住まいにあったものをご提案しています。
床下はスタイロフォーム、野地はサニーライトです。
学生下宿から、一戸建の賃貸物件に
今回は、工事を契約いただいた方と、お住まいになられる方が違う、いわゆる『借家』です。でも、とても借家とは思えないくらい手の込んだリフォーム内容になりました。
もともと、お施主さまの身内の方ガ住んでおられた良い家なので、借家だけれど、昔のように綺麗にしたいとの強い思いがあったのだと思います。

全体にゆがんでいた門塀をレベル調整してほぼ真直ぐに直しました。
一旦門を浮かして敷石を据え直したので少々苦労しましたが、建物の『顔』の部分なのできっちりと仕事をしております。
門戸は雨に強い米ヒバです。銅の樋できりっと引き締まったと思います。

玄関から敷き台・ダイニングを見渡した写真です。
奥に見えるのはパナソニック社製の洗面化粧台のシステムですが、新しい住設機器と古く良い建物の調和がとれていると思います。

登り丸太の母屋を表し、天井高さを高くとりました。天井の杉板の上には40mmのスタイロフォームを入れております。
ペアガラスの天窓を設け明るさを確保していますが、天窓には周りとの調和を考えて和紙調のアクリル板を入れております。

平屋建ての通り庭を少し広げて、リビングにし、小屋裏の丸太を見せています。
何気なく張ってありますが、丸太との取り合いのところがちょっと難しい(笑)。
天井裏に埋込スペースがないので、シーリングダウンを配置しています。

2間続きの和室の意匠をそのまま残しながら、天井と床だけ張り替えています。
正面に腰の曲がった松の木があります。
大きすぎて庭とつりあわないのですが、この家を長い間見守ってきた樹木なので、そのまま残す事になりました。

押入れの舞羅戸はあらき古材倉庫にあった古建具です。
古い感じが周りとしっくりきていると思います。
押入れの欄間の縦格子の中にはビルトインエアコンが仕込んであります。
また、襖の上の格子欄間には透明アクリル板を挟み込んであり、空調効率のことも考慮しております。

壁の中塗り仕上げ、障子の張替え、畳の表替えと木部の洗いをさせていただきました。
良い木材が使用してありますので、洗うことによって元来の美しさが蘇えりました。『私が生まれる前の姿なんだなぁ』と思うと少ししみじみとしました。

松本くんが造園しました。
美しい仕上がりに小谷様にも大変喜んでいただけました。建物の北側で建物の中を通っての庭なので手入れのし易さなどを考慮してあります。茶の間から眺めると心の休まる和みの空間になりました。
さらに快適な生活をおくれるように断熱・床暖房及び高グレードの住宅設備の設置という新旧融合の設計。貸し家にするのはもったいないくらいのグレードになっています。
この建物は居宅造りで、もともと構造材・仕上げ材共に大変良い材料が使ってあり、しっかりした建物ですが、経年によるゆがみや腐食が各所に見られました。
ゆがみ部分を調整し、腐食した木部を周りの古材部分と違和感が無いように入替え、焼け色に着色したりと、技術の必要な部分が多々ありました。
大工さんと一緒に知恵を振り絞って進め、無事完成することができました。
施主様による竣工検査の際に『こんなに綺麗になった建物を、早く母親に見せたい』とおっしゃられましたが、私はその言葉を聞いて工事中の疲れや苦労が吹っ飛ぶくらいうれしかったです。
本当に良い工事をさせていただけたと感謝しております。