北大路 17cmジャッキアップの家
静かな環境の中にある、戦前に建てられた古いお宅です。
見るからに、家が傾いてしまっており、倒壊の恐れもあったのですが、
- 新築すると、建築基準法上今の大きさの家が建てられない。
- 費用を安く押さえたい
- 和風のたたずまいなので、今ある土壁を生かしたい
- そして、なによりも、昔から住んでいた家なので思い出も多いので残したい。
というお施っさんの強い希望で、『何とかしよう!』ということになりました。
施工方針
工事に先だって、1F床を全て解体し、天井も一度はずします。
まず、地盤沈下のため、家の片側が17cm下がっているのを、水平にするために、建起しをします。
建起しをすると、「傾いた状態のまま仕上がされている」ため、内装(じゅらく壁)が割れてきます。
いったん、地震に備えて、柱と梁を耐震ダンバーで緊結します。
その後で、外部、内部を元の仕上(左官塗り)で修繕します。
施工写真 ①ジャッキアップ

柱の根元が逃げないように、根ガラミを入れます。
ジャッキ、ウインチ等で負荷をかけた時、足元が開かないようにするためです。

家全体にターンバックルや仮筋交等をいれて、少しひずみを直します。

ジャッキにて床のレベル(水平)を直すと同じに、ターンバックル、ウィンチ等で傾きを直していきます。
少しづつ、少しづつ上げていきます。
一度に上げると、壁が割れたり、反対側に家が倒れてしまったりするからです。

家を上げています。0~17cmの間であちこち上がってきました。
ここは、8cm

ここは、17cm

この玄関の敷居も12cm上がりました

家が水平になったところで、床下全体に土間コンクリートを打ちます。
これは、家の床下全体に家の重みがかかり、家の過重を均等に受けるためです。
そのあとで、基礎の補強をします。
ここは、比較的簡単に補強できましたが・・・。

ここは、大変でした。
というのは、床の間の奥で、床が取れないため下にもぐりこんで補強しました。お店の職人さんに感謝です (^^ゞ
そして、このままコンクリートが固まるまでしばらく待ちます。
施工写真 ②内部復旧工事

基礎を打ってからの続きです。 コンクリート打設前。

コンクリート打設後。

基礎の後、順次室内を復旧していきます。
まず、床組の復旧から。
せっかくなので、断熱材を入れています。

次に、天井も復旧します。

そして、内部の壁も復旧します。

外部も同様に復旧します。
これは、玄関。
ジャッキアップの結果、敷居の足元があがりましたので、15cm近く巾木をつけなおしました。
施工写真 ③仕上げ

玄関内部。
ジャッキアップの結果、玄関土間を15cmほど嵩上げしなければならなくなりましたので、全てやり替えています。
土間は墨入りモルタルにて仕上げ。
建具は既存建具を建合わせ直し、障子紙を張り替え、壁を塗り替えました。

表の間です。 畳は表替え。
壁は塗り替え。
天井は張り替え。
建具、ガラス戸は既存の建合せを行っています。

中の間です。 仕上げは表の間と同じです。
古い建具を掃除し、剥げている所に色を着け、建合せ直してきれいになりました。

奥座敷です。
畳のみそのまま仕様しています。
他は全て手が入っています。
かなりきれいになりました。

2階廊下です。
舞羅戸の押入がよく映えます。

2階の洋間です。
押入戸、間仕切戸には古いマイラ戸を再利用しています。
この戸も色のタッチアップ、建て合わせ等はしています。

台所はすっかり変りました。
システムキッチン・フロア材・壁ビニールクロスです。

玄関から、表の間
内外部全て、きれいに、昔のようになりました。
内部にはいると落着いた雰囲気があり、安心感のある空間になっています。
いくら、家が倒れていても、手間をかければ昔の様に甦ります。
そして、さらに子どもの代まで住みつづける事ができるのです。
もし、あきらめて解体してしまったら、倍の予算をだしても、どこにでもある洋風の家しか建てることはできないと思います。