古民家の再生 高槻 古民家

お座敷も含め、6つある和室が全て差鴨居という堂々たる民家です。
一番の目的は、建物のいがみ直しと構造補強です。
今回は、工事前の写真と工事後の写真と同じアングルで並べて表示しています。ご参考になれれば幸いです。
古民家の構造改修(改修前と改修後)

縁側の床を張り変えないので、柱を上げるために一工夫。差鴨居の真下に油圧ジャッキをセットできないため、たくさんのケンドで突っ張る。
大工さんには、「レベルを直して」としか言わなかったので、どうやって柱を上げるのだろうか心配していましたが杞憂に終わった。

床組を解体し、束石を補強。左上の写真は森脇さん。
土間コンを打ったあとで、柱の根継ぎ作業に入る。田の字型の和室の真ん中の柱なので、四方の梁を受けて柱の足元を切断する。
補強壁を作り、大屋根の荷重を分散させている。

解体中の現場。建具を撤去し、床を撤去すると柱だけが林立する風景に。
建具を引分にしたり、家具の後ろに壁量を追加したりして、建物全体の荷重をバランスよく分散させている。
手前の敷框も大きくねじれているため取り替えた。

4方から差鴨居がささっているため、柱が取り替えられない。そのため、鎌継で根継。継いだ跡は壁を新設したためほとんど見えない。
食堂側は杉板張。壁は全て白漆喰塗に。ご主人の背が高いので、左側の梁は同じ尺2の材料を手配し、高い位置にて取替。

食堂から庭を見る。手前の梁の位置が上がっているのがわかる。既存の梁を撤去すると柱に断面欠損が発生するため、埋木するだけでなく、追加した壁の中にも小さな柱を仕込んで梁を突っ張っている。
奥に向って襖もはまっているが、もともと3本溝の差鴨居で梁の見込が135mmあったので、薄壁とはいえ一定の耐力は期待できる。

新食堂から旧食堂方向を見る。正面の引違右手の壁も新設した。柱の下には、800角で坪基礎を新設し、屋根の荷重を新しく受けている。
左手の襖手前の壁も同様に新設した。間取りを考え、家具の後ろに壁を作る事で、使い勝手が悪くないように工夫している。

旧食堂から新食堂方向を見る。3間合わせると17帖の広い空間が生まれる。
左手奥にみえるのが明るいキッチン。下屋に大きな天窓をつけ、間接光が差し込むように工夫した。
一番手前の梁は、大黒柱に刺さっているため、強度を優先し存置とした。

作業しているのは牛田君。
手前の網代はトイレ天井用。
キッチン前の手摺壁は、電気温水器のリモコンと照明のスイッチが仕込める分だけ立ち上げ。
キッチン上に見える梁は、隣の空間に合わせて今回新調。
伝統木工法による 構造材を活かした改修

左手の縦繁格子戸は再利用。右手正面の大荒硝子桟戸もシールをめくって清掃し再利用。柱を3~5cmほど上げたため、既存のタイルとの間に隙間ができ、モルタル巾木で埋める。
壁は白漆喰塗。木部はワビスケ塗り。右手建具と敷框のみオスモマホガニー塗。

梁と柱の垂直水平が綺麗にでています。
構造材を美しく見せる和風建築のよさが表れた空間です。
床下は、フェノバボード50mm+土間コンクリート250mm。
壁は全て白漆喰塗。
畳は熊本産本井草です。

両脇の建具は手前も奥も再利用。柱を真っ直ぐにしたため、高さが足らなくなり、足元に20mmほど木材を足しています。
正面に見えるのはキッチンの対面カウンター。天窓の光だけで充分明るくなっています。

座敷のすぐ北側に寝室があります。
箪笥置き場の窓を大きくとり、硝子面の大きな建具にしたので、とても明るくなりました。襖を舞羅戸に替え、押入内をクロゼットに改修しています。

ここは、竿縁天井だったのですが、小屋裏の床組を見せる事にしました。
もともと、四方とも、右手の梁と同じ高さに梁がぐるっと回っていたのですが、同じ尺2の梁を高い位置に入れ替えています。正面の桟戸の向こうが寝室。左手の明るい空間が台所です。天窓の光がダイニングに降り注いでいます。
外壁や屋根がリフォームされていたので、だいぶ心配しましたが、外壁の大きな剥離もなく、瓦の暴れも補修程度で収まりました。また、工事中に断熱材が不足しましたが、これもなんとか集めることができました。いろんな事が上手くいき、ほっとしています。
解体・基礎・設備・左官・塗装、そして大工… さまざまな職方の技を活かして建物を元の状態+快適な空間に作りかえることができました。本当によかったなと思っています。