建った時から古い家

焼板と白壁のコントラストが美しい
・ 家族構成:両親+夫婦+子ども1人(2世帯住宅)
・ 竣 工:2002年07月
・ 構 造:木造2階建(ロフト付)
・ 住 所:長岡京市
昔、町家にお住まいになっておられ、『使いにくくてもいいから、家にかえってほっとするような』住まいがいいとの事。最近の住宅は、工業製品のようで、人の手が感じられない。そうではなくて、いかにも『人が作った』のが感じられる住まいを希望されました。
最初にお会いしてから、着工まで、半年以上かかりましたが、大変気に入っていただきありがたいと思っております。
新築のポイントは「建ったときから古く」
施工にあたっては、
- 弊社で保存している古材・建具を再利用する
- ドアノブ・照明等も、古いものを探して使う
- 通り庭からリビングと和室それぞれに入れるように
- 塩ビの建材は使わない
- 床・腰壁・梁・柱等、見えるところの木部は全て古色塗する
といった点に注意をはらいました。
仕様については、かなりお任せいただいたので、大変楽しく施工でき、感謝しております。
■ 外 観

高台の上に建っている上、壁を真っ白に仕上ましたので、かなり大きく見えます。
下見は焼板貼。焼板の上の水切りは、銅板を加工しました。
壁は、漆喰塗りのようにみえますが、漆喰は雨に弱いので、モルタル下地の上白ペンキを塗っています。壁の面積が広いため、凸凹に見えないよう、下地は3度塗りしています。

窓は、防火法の関係でアルミサッシを利用していますが、少しでも風情をだすために、雨戸の鏡板は杉板で材工しました。
玄関です。
真っ暗で見づらいですが、玄関引戸は松の古色塗。
玄関照明は、照明器具の台座を壁の中に埋め込みました。壁から蔓首が伸びてよい感じです。
■ 1 F

床はモルタル押え仕上。奥の沓脱は松。手前の供待(ばったり)は杉で材工しています。
和室からでたところに、天窓を3箇所とりました。明るい日差しが差し込んできます。
裏木戸を開けると、心地よい風が土間を通りぬけていきます。

玄関ホールの床はトノコ塗。奥のリビングは紅柄+玉墨を塗り、その上を油で拭いて仕上ています。いずれも松板で厚34㎜です。

左右の板戸は、古いお住まいを解体した時に保存しておいた建具を再塗装したものです。
右の板戸は、開けるとクロゼット。左の板戸は開けると階段があります。
正面上の欄間には煤竹を使っています。これも、古民家を解体した際にでたものの再利用です。
煤竹も最近なかなか調達できなくなりました。かなり貴重です。
右の写真のように、反対側は、掛障子にしています。このお宅の場合、子供部屋以外は全て紙障子をつけていますが、それらとデザインを合わせました。

床:松板34㎜
壁:杉板12mm
柱:桧(一部、古材)
梁:米松
カウンター:桜(古材)
電話台:ホワイトアッシュ

大黒柱は、古材を再利用しています。昔の仕口跡が残ってしまい、埋めてしまおうかとも思っておりましたが、お施っさんから『そのまま中を塗ってください』といわれ、そのように仕上ました。
結構味がでてます。 (^^ゞ

カウンターも、弊社在庫の桜の床板を磨いて再利用しています。
真ん中のペンダント照明は、祇園のお茶屋さんを解体した時にでてきた照明を再利用しています。「大正ロマン」という感じがでてますね(^^ゞ

和室です。
床柱:北山杉錆丸太。欄間・襖:弊社在庫品。天井:竿縁天井屋久杉。
欄間は結構在庫してまして、お施っさんに弊社の倉庫まできて選んでもらいました。
正面の引分け襖は、某能楽堂の建具です。
京唐紙が貼ってあります。
床の間ですが、本をたくさんお持ちだということで、「機能優先」で本棚をぶらさげちゃいました。
塗装してしまえば、違和感もなく、思っていたよりすっきりおさまりました。

トイレ前廊下の天井です。ここも古風に竿縁天井です。最近、大板が流行っており、こうした竿縁を新調する事もめっきり少なくなりました。
左の天袋の板戸は、古い板戸の引き手の所だけはずして再利用しています。

トイレです。ほとんどの部屋は、床を松板+古色塗としていますが、トイレ・洗面等の水まわリだけは、フロアー材(表面ウレタン塗)を使っています。
ここは、なら材小幅無垢厚18㎜を貼りました。

トイレで一番暇のかかったのが、このドアノブ。梅の木の根っこです。
なかなか上手い曲り具合の材がなく、竣工直前に取りつけました。
それでは、2Fにあがってみましょう。
