西陣 京町家
解体寸前の町家を直す
弊社がお付き合いしている不動産屋さんから、「いい物件があるんですけど、誰かアラキさんの知り合いで直して住みたいというおられまへんやろか?」という問い合わせがありました。早速見に行きましたら、それはそれは立派な建物。
建物自体はかなり傾いているし、腐朽も激しく、また2Fはほぼ全面的に改造された跡がありました。でも、通り庭から見上げる木組みがすばらしく、なんとか残せないものかと思いました。
そこで、弊社のWebSiteに掲載したところ、「こんなの直るんですか?」という問い合わせのメールが届きました。
こうして、解体予定の町家を復元することができたのです。大変嬉しいことです。
今回は、一部の画像( ● )をマウスオーバーすると、施工前の写真がでてくるように工夫してみました。ご参考になれば幸いです。
外観です。
かなり奥まったところに玄関があります。もともと織物屋さんの町家で、あまりに奥行が長いため、「表屋造」(オモテの次に中庭を作り、オクと分離する構造)だったんですが、駐車場をつくるため、表屋を解体しています。
屋根は、野地板から全部新調しています。
玄関前に石が敷かれていますが、全て裏庭に放置されていたものの再利用です。
表屋を解体する際、出書院とくぐり戸が勿体無いので、母屋につけかえて再利用しています。くぐり戸脇の鎧張の腰板も再利用です。
玄関照明は、昔風に、丸いブラケットに苗字を書いています。
玄関前にある植栽は寒椿です。
通り庭です。この町家で一番いい空間です。
天井が真っ黒なので板張りのように見えますが、実は垂木の上から『9㎜ボード+こげ茶のクロス』で仕上げています。
壁は、中塗仕上げです。
断熱材は垂木の間に仕込んでいます。
正面左手にみえる2つの壁は、「玄関収納」と「トイレ」です。
正面のガラスはアルミPGに入れ替え、チェーンで開閉できるようにしています。
天窓も、もともと玄関のすぐ上にあったのですが、これではかなり暗いので、棟近くまで移設しました。
京町家特有の側柱が映えます。
床は松板厚38㎜、床下にサニーライト40㎜を張っています。
写真ではわかりませんが、式台は、奥座敷にあった欅の床板を使っています。
左手の建具はもともとこの町家にあったものを洗って再利用しています。
正面に井戸が見えます。結構澄んだ水が沸いていましたので、ポンプを交換し、庭用の散水に利用しています。
中央右よりに、2Fの廊下が見えます。2Fの廊下に立つと玄関が見下ろせる形になっています。壁付のペンダントは1Fでも点灯できるようにしました。
もともと、2Fに廊下などなく、表から裏まで全部吹抜けでした。ですからこの写真に写っている2F廊下や手摺も今回の工事で新しく作ったものです。
お施主さんの希望で、腰壁には焼板を張っています。
天井は葦(といっても、ボード状の中国品ですが…)張です。
さすがにトイレの床は汚れると嫌なので、ウレタン塗装付のフローリング(桜)を張りました。
松下電工製のキッチンです。吹抜けの多い空間のため、部屋が汚れにくいようにと、IH調理器を入れています。
正面の天窓は、洗面の天窓を兼ねています。
左の壁は全面杉板を張っています。食器棚の後ろになるからです。
施工前と比べていただくとわかると思うのですが、床・壁・天井とも全面的にやりかえております。
床は、全面コンクリートを打ち、基礎もかなりの部分で打ち直しをしています。
特に、キッチンまわりは、「雨が降ると床が水浸しになる」状態でしたので、改修に少し手間取りました。