アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

下京区 京町家

仕口ダンパーを使って直す

 最近、地震のニュースを数多くきくようになりました。
 古い町家はどうしても構造上揺れが大きくなり、心配されて弊社にご相談されたの所から工事をさせていただく事になりました。
 壁を増やしたり、間取りを変えたりして、今の建築基準法に合うように改修することも考えられました。ただ、そうすると、昔からある間取りが変わってしまいますし、費用もかさんでしまいます。
 そこで、今回は、仕口ダンパーを使って補強する事にしました。1Fに24ケ、2Fに18ケ取り付けました。大体1坪あたり1ケ取り付けることで、「地震の時には、壁は割れるが家は潰れない」という構造を確保することができました。


改修前の玄関

 改修前の玄関の写真です。雨避けに全面波板で覆われており、外から見ても、町家かどうかわからない状態でした。また、何回か改修をされているため、本来あるべき出格子も見当たりません。もともとは、ダンパーをつけるだけの工事だったのですが、お住まい全体をきれいに改修する事になりました。

改修前のリビング

 改修前のリビングです。
 もともとあった通り庭にフロア材を張っておられたのですが、吹き抜け部分が寒く、生活しづらいとの事でした。
 でも、町家で一番いい吹き抜け空間ですのでふさぎたくありません。ここは、床暖房を敷き、床下にも断熱材を多めに入れて寒さをしのぐ工夫をしました。
 また、写真正面に2Fのトイレがあり、あまり光が入らず、デザイン的にもすっきりしないとの事。
 ここも、左手の格子に合わせてデザインしなおす事にしました。


改修中の通り庭

 左上の写真の床をめくり、薄いモルタル土間を割って、土間コンを打つ直前の写真です。
 全体にクラッシャーを70ミリほど敷き詰めて、ランマーで突き固め、土間用防湿シートを敷いています。
 その上で、メッシュを敷き、かずら石にはアンカーを打ち込んでいます。
 あちこちに給水管、排水管が立ち上がっているのがわかりますが、このように、できるだけ真直ぐ配管することで、途中の詰まりを防いでいます。(町家は奥行きが長く、所定の水勾配が取りにくいからです)

改修中の吹き抜け

 土間が打てたら、吹き抜け空間全体の仕事をするために、通り庭内部に足場を組みます。この足場を使って、
 ・天井の塗装
 ・壁の塗替
 ・吹き抜け上部の建具の取付
 ・照明配線、電気配線の仕込 等
を行います。
 
 なお、今回は、こうした通常の作業の前に、耐震ダンパーを取り付けていきます。

仕口ダンパー/ラス地

 仕口ダンパーは、「梁と柱の仕口に取り付けることにより、振動を吸収する」働きがあります。
 右の写真のように、一部壁をめくって取り付けます。
 室内で梁・柱が見えているところだといいのですが、大抵天井裏にもぐってつけないといけないので、ちょっと大変です。

耐震ダンパー/荒壁地

 こちらは、押入れの天井をめくって取り付けたところです。梁材が丸太の場合は、柱との直角面が確保できないため、一部梁を削っています。
 下・右に見えているのは荒壁下地です。竹が邪魔になる場合は必要最小限に限って切り取ります。

竣工写真

全 景

 こちらは、正面玄関全景です。
 表にあった波板は撤去し、左から、玄関引戸・出格子・竹格子・勝手口と並んでいるのがわかります。

 玄関引戸は、古いものを再塗装。出格子は、蔵においてあった古い建具を加工して再利用しました。
 その際、古い建具の幅が狭かったので、似たように造りました。
 竹格子が犬走り近くまで下りているのは、「エアコンの室外機を隠すため」です。
 また、右端の勝手口は、「別のところで使われていた室内建具を移動して」再利用しています。

玄関内部

 玄関を入ったところの佇まいです。左手は井戸跡。正面の建具は、これも、蔵にあったものを再塗装しています。
 上の方に引違戸が見えますが、これは、明るさを取るために、既存の壁を撤去して新調しました。
 左手の井戸引は、足元を補強してそのまま残しています。

ダイニングキッチン

 きれいにしたダイニングキッチンです。
 吹抜左上の片開戸は下から紐で開閉できるようになっています。その右手の壁は白く塗って「外にトイレがあるのがわかりにくく」なるように工夫しました。
 右上の壁付照明は、どうしても取付したくて、私がお施っさんにお勧めしました。(^^ゞ
 このキッチンから天井を見上げると、扇風機が廻っています。暖気を下ろすためです。

出格子裏 和室

 玄関脇の和室です。
 出格子の分だけ、部屋が少し広くなりました。
 出格子の裏には、日除対策で、ロールスクリーンを吊り下げています。 堀炬燵の天板は、古い松の1枚板が蔵に残ってましたので、それを利用させていただきました。


2F続洋間

 奥座敷です。
 ここは、仕口ダンパーを仕込んだ以外は、畳表替、壁塗替、襖張替、網戸貼、といった表面的な内装工事のみをやりました。
 良いものは、手を加えなくても良いと実感できます。

広 縁

 座敷奥の広縁から、洗面・DK方向を見ています。
 ここは、正面の建具と、竿縁天井。壁際の照明器具のみ新調しています。
 それ以外は、全て既存の材料を洗ったり、塗ったりしただけですが、大変きれいになりました。

D K
 ちょっと、後ろから撮影してしまいました(^^ゞ
 実は、当初案では、この2部屋は押入で仕切られてましたので、このアングルからは撮影できないはずだったのです。
 おかげで、すっきりとした間取りになりました。
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