錦 京町家

このお住まいは、個人的に思い出深い町家です。
実は、離れへの渡り廊下を作り変えることになり、間口5間の框戸を探していたのですが、残念ながら弊社には在庫がありませんでした。
それでどうしようか悩んでいたのですが、たまたま、三田にお住まいの方からお電話があり「やむを得ず名古屋に引っ越す事になり、今の住まいを引き渡さなければならなくなった」とのこと。
解体される運命にあるので、よさそうなものを引き取って欲しいといわれるのです。
弊社からはちょっと遠く、少し躊躇したのですが、お電話の声から察するに感じの良さそうな方でしたので、お伺いすることにしました。
残念ながら構造体はばらせませんでしたが、建具を中心に有難く頂きましたが、その中に間口5間の框戸があり、再利用させていただきました。
台桧の大変立派な硝子戸で、お施主さんには大変喜んでいただけました。
建具の第2の人生がこうしてスタートしたのです。

外部は、漆喰塗替や、木部再塗装等表面的な改修しかしていません。

2枚引き込み戸になっています。
戸を開けたところは、もともとモルタルが薄く打ってあったのですが、配管替のために全て撤去し、裏庭に余っていた石を並べてみました。
土間はタタキ風モルタルを打っています。

ゲンカンニワ(表から2部屋目の土間)から吹き抜け上部をみています。
こういう一見「無駄」な空間が町家独特の開放感をもたらています。
なんとなくホッとします。

左の写真はゲンカンニワから入ったところ。
右の写真は反対に奥の水場から見たところです。
キッチンは、日立の一番安いシステムキッチンですが、扉に杉板をペタペタ貼りました。
照明は米松の無垢板にハロゲン球を埋め込んでいます。

上から見ると、トランスが並んでいてちょっと残念… この天窓は雨漏りが止まらず大変苦労しました。

これが、何故か設計の先生方に大変人気。
もともと、コストを圧縮するために「古いものは何でも使おう!」と考えていたのですが、ここは、思いきって庭に放置されていた『袖垣』を再利用しました。
板の割れ目からこぼれる光がなんとも素敵です。

正面の照明の目隠しは、弊社に転がっていた栗の端材にオイルスティンとソルコロを塗り、そのあとで、プレーナーをかけたものです。
皮の部分だけ塗装が残り、いい感じです。
『コニシ白ボンド』さまさまの建具
大きく亀裂が入っていたのですが
ボンド一杯埋めてクランプで固定し、復旧しました ♪
