薪ストーブのある京町家

市内某所にある古い町家。1列4室型の大きなお住まいです。
何度か改修を重ねておられましたが、
・できるだけ昔のものを残し
・冬暖かく
・安全に
住み続けたいとのことで、全面改修することになりました。
リフォームされる京町家

今回は、京町家作事組(設計:CUCANIAさん)のお仕事です。
側柱の足元から直していくので、1階の床組は全面解体することになりました。

東西に長い町家ですが、両隣に家が建っていないため、水が室内に浸入しています。
これを防ぐため、側柱の足元葛石の上にブロックを積み、柱の外側に防水紙を張った上にモルタルを塗りました。

福井さんが荒壁をつけています。
今回の工事では、外壁が大変傷んでいて、揚げ前をしたとき、貫が外れて大量の壁が滑落してしまいました。
手前に荒壁土を発酵させるための船が見えます。藁スサは日吉町から調達しました。

正面にイガミツキ用のポストが見えます。
長年南側に倒れた癖がついていて、1ヶ月近く突っ張ってやっと安定しました。
敷框は白蟻の害がひどく新しく入れ替えています。

タイル張りの外壁を解体。昔の出格子の跡がでてきました。
昔のホゾ穴にあわせて復旧します。どうしようかと、思案中の牛田君(大工頭)。
問題があったらすぐ連絡してくれるし、家のためになる事もたくさん提案してくれます。


←← 荒壁を運んでいる見習い君。
若いうちは何でも勉強です。
← 外壁も既存のトタンをめくって下地をします。
この上に断熱材と湿防水シートを重ねて、焼板を張り上げます。


←←天井裏に根太を転がすスペースがありません。
そのため小梁の上に杉板24mmを敷き詰め、薄畳を敷く事になりました。
←南北方向の壁量を確保するため、バランスよく袖壁を新設しています。
筋交を入れると固まりすぎるので、端板を詰張しています。

ニットーのクロスパテを練りこんでいます。
埋木ができないところは、どうしても仕上げが汚くなるので、ワビスケ塗装前にパテ埋します。
本来は塗装屋さんの仕事なのですが、納得できる仕上がりを目指したいので、自分でかなり下処理をしてくれました。
リフォームされた京町家

竣工写真です。
外壁を解体した時、梁下に以前の格子の掘り込み跡が残っていたので、それにあわせて復元しています。
子持ちのない少し太めの米屋格子です。

敷框がピーラーで真っ黒に塗るのは忍びないので、砥の粉をまぜて赤っぽく仕上げています。
正面の建具も足元がばらばらだったのですが、綺麗に直しました。
表通りより、土間天が低かったので、既存の葛石を全て入れ替え、地盤面を上げて水が浸入しないようにしました。
引戸の下の石も、敷框の下の石も全て新しいのはそのためです。

天井は母屋の間に100mmのグラスウールを充填し、杉板を張上。
天窓を3箇所とったのですごく明るい空間になりました。
リビングは楢材。
CUCANIAさんのご指定で、『エゴマ油(しそ油)』を塗りました。濡れ色で綺麗な仕上がりです。

キッチン脇の袖壁は構造補強用。
正面にみえる薪ストーブがかっこいいです。

1間の間口に、『両脇に横桟戸、真中に紙貼障子』と典型的な建具ですが、実は、間口にあう古建具を探して取付けたものです。
欄間は壁をくりぬいて新調。
照明器具も施主さんがご自身で選ばれたもの。
昔ながらの町家に戻す事ができました。
(実は、正面の押入の中にモデムやルーターが入っています)


昔ながらの広縁。
障子も、化粧野地も、軒桁ももともとあった素材を再利用しています。
建具は地杉。比較的利口な源平板ですが、赤みとしらたのバランスをそろえたのがアクセントになっています。
建具の向こうはトイレです。

↑町家特有の「建具を全開して風通しができる間取りです。
間口3.5と比較的広いお住まいでしたので、体力壁を増やしても、狭く感じない空間ができました。

2階に登る階段は元のまま。両側の壁も状態が良いので元のままにしています。


まだ畳を敷いてないので、畳下の杉が見えていますがすごく綺麗。
左手に左官下地窓が見えています。昔なさった職人さんの腕に感服します。

美しい・・・
準棟纂冪がなくても、側柱と母屋が並んでいるだけで綺麗な空間です。
これも、イガミを直し、揚げ前をして直角を出した成果です(^^ゞ
でも、いろんなご提案をさせていただくことができ、大変楽しく工事を進める事ができました。
いつものように、竣工直前にドタバタとしてしまい、沢山の質疑が出てしまいましたが、どれもすぐにその場で決めていただいたので、本当に助かりました。
職人さんも気持ちよく仕事をすることができ、感謝しています。
最後にあたらせていただいたストーブ暖かくていい感じでした♪