京町家のリフォーム 杉玉のある京町家

マッサージ店だった町家を全面改修することになりました。
2階にはお茶屋のような掃き出しの縁がまわっていた形跡があり、本願寺近くの土地柄、全国からお参りされた信徒さんの宿所として普請された建物でないかと推測されます。
京町家のリノベーション 1) 施工



以前の所有者が、建物の2面を道路際まで増築されていたため、かなり危ない状態でした。
建物内部も、全てビニールクロスが張られていて、往時の面影はありませんでしたが、これを頑張って復元させることになりました。



足場を組んで解体してみると、かなり状態が悪いのがわかりました。通り柱が撤去されたり、シロアリが廻っていたり、さらには、2Fを支える梁も階段をつけるのに邪魔になったためか切断されていました。



基礎もなく危険なため、表は葛石を据えましたが、妻側はベース打ちなおしの上、ブロック基礎を立ち上げ、水仕舞をよくしました。



構造がきちんと直れば、あとはいつもの仕事です(少しはしょりすぎですが・・・)。
往時の雰囲気がすこしづつ蘇ってきますね。
京町家のリノベーション 2) 竣工

今回の建物は角地に建つため、外観の入母屋屋根や壁面が周囲からよく見えます。
工事前の写真と見比べるとだいぶ小さくなりましたが、格好はよくなりました。
町家出格子、肘掛手摺、入母屋造の屋根、一つ一つ手が込んでいます。
犬矢来も新設しました。

もともと、この軒先あたりまで壁がでていたことを思い出すと、少し不思議な感覚になります。
出格子、下屋根、瓦、化粧野地、葛石など、ほぼ全て新調しているのがわかります。
玄関左下に見える明かりは、お客様が、インターネットで探されたもので、屋号を彫りこんだ特注品です。


外部に増築されていた階段をミセノマに戻しています。大和天井を復元し、全て土間だった空間に床を張りなおしています。

1Fのリビングです。大きなTVのまわりはPanasonicのリビング収納です。床板はチーク材のモザイクフロアです。

壁に時計が埋め込まれ、その下に、マガジンラックも埋め込んでいます。
もともと、敷地一杯に増築されていたのですが、元に戻すことによって庭ができ、光がリビングに差し込むようになりました。


リビング天井にサテライトスピーカーを配置。窓は内付障子の向こうにアルミペアガラスを二重に入れ、道路からの雑音を軽減させています。
2Fは間仕切りの襖を2枚引込とし、天井も登り丸太をみせることで、広い空間を確保しています。



建物は昔の意匠を復活させていますが、水廻りは最新設備を入れています。
浴室はLIXILの打たせ湯付。トイレはPanasonicのアラウーノです。
前栽は施主さんが購入された「我唯足知」の刻印のある擬似石。小さいながらも趣のある空間になりました。
工事中は、柱・梁の入替、傾いた長屋建ての難しい条件のなか、大工の森脇さんが黙々と作業してくれる姿に、本当に頭が下がりました。