荒神橋 復元京町家
復元された京町家をご紹介します。
京町家完成見学会に来られた際にご相談を受け、改修させていただく運びになりました。
お住まいを拝見すると、内外部共町家だった名残がほとんどありません。出格子も無く、ごく普通のお住まいにリフォームされていましたが、よくよく調べてみると残された柱や梁に町家だった痕跡が残っていました。
今回は、思い切って、元の状態にリセットした上で、京町家の佇まいを復元する事になりました。
改修前

[改修前 外観]
ごく一般的な戦後の建物のように見えます。京町家だったとは思えない外観ですが、解体してみるとその名残がでてきました。
今回は、これを元の状態に戻す工事をします。
少し、わくわくします。

[改修前 廊下]
土間には練りつきの縁甲板。天井にはジプトーン。壁はプリント合板が張られています。でも、わずかに見える柱が、昔町家だった面影を残しています。

[改修前 食堂]
町家の『中の間』です。合板が張られていますが、大和天井だったことがわかります。こうした改修も、いままでたくさんの人が暮らし、生活を支えるために必要だった事かもしれません。

[改修前 寝室]
2F表の間です。この部屋は比較的和風の雰囲気が残っています。こうした内装も、戦後に改修されたものです(壁をめくると、昔の屋根の跡が現れ、現在の位置と違う事がわかりました)。
竿縁天井・垂れ壁とも状態が比較的良好だったので、そのまま再利用することにしています。
改修中

[改修中 イガミツキ]
数十年かかって南側に倒れていたため、仮筋交をかけて起こしています。
こうした作業は建物の『起こしたい側』に隣家が隣接していない事が条件になります。しばらくつっぱっていても、仮筋交を外すとまた倒れてくるので、今回は、耐力壁をバランスよくつける事にします。

[改修中 耐力壁]
新しく布基礎を立ち上げて、既存の梁の下に耐力壁を新設します。『町家は揺れてもつ』といいますが、現場の状態により case by case で固める事もあります。

[改修中 床組]
2F表間の床組です。大変状態が悪かったので、思い切って室内の構造材は総入れ替えする事になりました。外周部分はそのままなので、仕口を入れるためにいろんな工夫をしています。

[改修中 下屋]
表下屋を復元しています。以前あったとおもわれる出格子の痕跡を確かめつつ、新しく新調しています。最近このような仕事が増えて大変嬉しく思っています。
竣工後

[竣工後 京町家外観]
1Fは昔の外観に。2Fは手すりを新設しています。
糸屋格子・一文字瓦・漆喰壁・ベンガラ(わびすけ)塗と、いつもの(♪)仕上にしています。

[竣工後 京町家出格子]
艶消しのベンガラ(わびすけ)塗仕上です。
油性ペンキを塗られている格子をよく見受けますが、経年劣化ですぐにひび割れてしまいます。内部はペア硝子を入れ断熱にも気をつけています。

[竣工後 廊下]
1F室内はほとんど全て新調しています。そのため、こげ茶に統一する必要がなくなったので、白木+植物系塗料で仕上げています。床は楢材。枠は杉材です。

[竣工後 食堂]
奥の間から出格子方向を見ています。天井を高くとるために、小梁を見せる事にしました。こうした洋風の空間もすっきりしてよいものだと思います。

[竣工後 2F表間]
天井は再利用していますが、吊り直し、小屋裏掃除+断熱材充填をしています。内障子もはめて、落ち着いた空間になりました。

[竣工後 2F中の間]
中の間から表間を見ています。
垂直・水平がきっちりと直っているので、ここちよい空間に変わっています。
どのような町家でも、お施っさんの思いが通じたら直す事ができます。また、このようなケースがあれば、是非声を掛けてみてください。お待ちしています。