準棟纂冪の京町家V
立派な京町家を、今までの材料を極力生かして改修しました。思い出を残し、昔の雰囲気を残しつつ快適に生活できるよう工夫しています。
現場を担当した大工さんは、桜井宏昭くんです。
【職人紹介】:町家大工:桜井宏昭
施工 今では入手困難な木材を極力残して構造からリフォーム
昔ハシリニワだった部分です。天井裏に立派な桟冪が見えたので、元に戻す事になりました。
油圧ジャッキで屋根を受け、基礎と構造から直すいつもの作業です。
ベース基礎を打ち直し、葛石を新調し、腐朽した柱を根継しました。
水廻棟の小舞化粧野地を綺麗にばらして、垂木と面戸板を取り替えました。
サワラのヘギ板は入手困難なため、傷みが少ない材料を再利用。軒先は新しい材料で揃えました。
軒桁下にあった手すりを、一旦バラして屋内に移設。床に残った昔のホゾ穴は埋木します。
移設時に余った手すりの化粧板は再利用。垂木の横から固定するため割付は慎重に計算します。
大工見習の益倉君です。貫板を入れ、竹を這わせて縄で編むのも大工の仕事です。
編んだ下地に伏見深草土を塗りつけていきます。手前からも塗っていきます。
大工の桜井君です。いつも姿勢がいいです。フランス料理のシェフのようです。
ハシリニワに設置する本棚の框を加工します。柱の臍に差し込むことに。化粧仕上なので慎重に。
台所に設置する変わり格子。組子を修繕し、木製網戸を新調しました。
竣工 新旧の木材をピッタリ納めて再生する
壁は幅広の籾板、漆喰塗。土間は深草土洗い出し。葛石は御影石です。
台所を移設し、本棚・シンク・洗濯機置き場を新設しました。本棚の建具は、縁側で使われていた框硝子戸です。
構造は改修しましたが、仕上は、ほぼ建築当初の意匠を残しています。
左官は浅葱土塗。格子や建具は凝った意匠を修理して再利用しています。
古い照明器具はソケットやコードを新しくして再利用しています。
座敷は、畳から地桧フローリングに張り替えました。
将来畳が敷けるように、畳下板を敷き詰め、その上に小根太を入れて床を張っています。
キッチンは普段使いのため、一般的な仕上にしています。
天井は壁紙、壁も壁紙とキッチンパネル、床はコルクタイルです。
キッチンはPanasonic製です。
新旧素材が組み合わさった縁側です。寒さを防ぐため金属建具を入れて、手すりを移設しています。網代引戸は新調です。
腰板は地桧の羽目板。クロスは聚楽調。便器はTOTO ピュアレストEXです。
すだれ掛の吊木が垂木の手前になったり奥になったりと苦労しています。
昔から、そこにあったような古い手すり。当社の大工さんはなんでも器用にやってくれるのでありがたいです。
立派な表屋造りの町家でしたので、極力、建築当初の面影を損なう事がないように改修する事を心掛けました。
石を据え直し、腐朽部材を取り替え、沈んだ柱を持ち上げ、鼠穴を塞ぎ、天井裏を掃除し、古い柱や天井を磨き、欄間や建具の組子を修繕し、凝った意匠の手すりを簾掛として再生し、不要となった建具は場所を変えて再利用し・・・そのほとんどを大工自らが行っています。
一見しただけではわからないかもしれませんが、実は丁寧な修繕作業の積み重ねに支えられている事をお伝えさせてください。
今回初めて、襖の引手の燻べ直しをしました。年月を経た味は残しつつさっぱりと仕上り、とても良いと感じたので、上質の引手は捨てずに再利用してみてください。
石を据え直し、腐朽部材を取り替え、沈んだ柱を持ち上げ、鼠穴を塞ぎ、天井裏を掃除し、古い柱や天井を磨き、欄間や建具の組子を修繕し、凝った意匠の手すりを簾掛として再生し、不要となった建具は場所を変えて再利用し・・・そのほとんどを大工自らが行っています。
一見しただけではわからないかもしれませんが、実は丁寧な修繕作業の積み重ねに支えられている事をお伝えさせてください。
今回初めて、襖の引手の燻べ直しをしました。年月を経た味は残しつつさっぱりと仕上り、とても良いと感じたので、上質の引手は捨てずに再利用してみてください。
現場監督 長崎 道