京町家の再生 通り柱を取り替えた町家

モルタルで覆われた京町家を、あるべき状態に復元しています。
解体する前から、階段が登れないほど傷んでいて、怖い状態でしたが、構造体からきっちりと直しています。
外観は伝統的なデザインにこだわりましたが、内装は、ご主人の要望を伺い、余分な木材や金物を見せないように可能な限りすっきりとした仕上がりを目指しています。
京町家の再生 傷んだ構造体を入れ替える

雨水が足元まで落ち、柱が蟻害でボロボロになっていました。
梁も柱から伝わった水の影響で、傷んでいます。
今回は通り柱を撤去して入れ直すことにしています。

足場を組み、屋根や壁の荷重を受けつつ、腐った柱と梁を撤去します。

腐ったところを切り落とし、丈夫なところを残します。
ここから、継ぎ手を作ります。

もう取り替えてしまいました。(=_=)。早い。早すぎます。あっという間で断熱材まで入りました。
継いだ梁と入替えた通り柱が明るい色になっていますね。この後こげ茶色に塗って違和感がないようにしています。
京町家の再生 伝統的な意匠を復元

町家に特徴的な出格子を復活させました。玄関建具も木製にし、建具脇は鎧張りの腰壁を新調しました。
2Fは本来の屋根に戻し、虫籠窓を新設しています。

室内に入ると、一転して木材の生地を出しています。
真壁仕様にはこだわり、大工の腕を見せた仕上げです。
左手のカウンターも、壁を作る前に下地を入れています。L型の受金物はカウンターの中央一箇所のみとし、すっきりと仕上げています。


玄関ホールの家具も、お住まいにあわせて造作しています。
リビングの真ん中にインターフォン親機のついた袖壁が見えています。
この向こう側に天井いっぱいの引戸が引きこまれるようになっています。
全開すると写真のように1室として利用できます。

オクノマの建具も同様です。
床板に溝を突いてレールを埋め込んだので、縁側とオクノマが一体になり部屋が広く感じます。
天井いっぱいの大きな建具のため、取付が大変で大工さんの評判が悪いです。

弊社の松本造園に依頼し、現場に残っている石を利用して再構築しています。
お施主さんの希望で、枝垂モミジといろはモミジを入れました。
残りの植栽は、施主さんのご自宅から移植しています。

ここは、もともと、階段が急で、踊り場が広かったのですが、今回、緩い階段に付け替えたため、手すりが寸足らずになってしまいました。
そこで思いついたのがロートアイアンです!

襖紙は見本帳を見ながら、桂離宮と雰囲気が似たものを選びました♪
唐紙などは使わず、一般的な色鳥の子紙を使っていますが、手間を掛けて千鳥に張ったので、ぐっと部屋が引き締まりました。
とは言いましても、新築当時の姿は写真も残っておりませんし、お客様もはっきり覚えてられるわけではありません。
そんな中、出格子のデザイン、虫籠窓の設置、耐力壁の増設など様々な方向から検討した結果、写真にあるシンプルな仕舞屋(しもたや:お商売をされていない普通の町家)になりました。
出格子のデザインはお客様も最後まで迷われていて、最終的に子持格子に決まりました。やはり仕舞屋の格子は華奢な細い目の格子がちょうど良いと思います。
また、建物の短手(間口)方向にはできるだけ耐力壁をバランス良く配置したかったので、出格子内部の左端に耐力壁(荒壁程度)を設置するなど、間取りに支障のない程度に増設させて頂きました。耐力壁は一例ですが、屋根の葺替えや、外壁の焼板貼り、柱足元の基礎石の補強、柱のジャッキアップなど、少しでも永くお住まい頂けるよう、少しでも生活し易いように、大工さんや協力業者の皆さんと共に力を合せて工事させて頂きました。
こちらの建物がこれからどのように変化していくのか、我が子のように見守っていきたいと思っております。