西陣の京町家Ⅱ
京町家リフォームの前と後
長年ご商売をされていた悉皆屋さん。
何度も改修され、店舗として活躍していた町家。
いろんな思い出、たくさんの出会いを経て今も残る。
でも、時は流れ、お店はなくなったが解体するには忍びない・・・
大切な住まいだからこそ、「ご苦労さんだったね」と声をかけてあげたいですね。これからも、末永く苦楽をともにした住まいとともに暮らしていければ素敵です。
※写真にマウスを置くと施工前の写真になります。
京町家を『美容整形』ではなく『骨格』から直す
家族が増えるにつれ何度もリフォームされた京町家。
遠隔地にお住まいだったが、メールと写真で進捗をお伝えし、痛んでいるところは隠さず報告。安心して住んでいただくために、協力業者さんと一緒に最善を尽くした。
工事中の写真をいくつか抽出。どんなリフォームをしたのか参考までにお伝えしてみたい。

京町家の床を全面解体。町家の骨格から改修するために必須の工程。
これで構造がどれだけ痛んでいるかおおよその見当をつける。

給排水管の逃げを行った後、土間コンクリートを打つ。
木部がコンクリートに接しないように気をつけながらの作業。

解体作業中に町家の角柱が撤去されている事が判明(矢印部分)。
水廻りをリフォームしたときの仕業か。すぐに施主様に連絡。

下がっている柱を油圧ジャッキで慎重に揚げる。葛石との隙間は石・金物・基礎パッキン等で充填。
斜めの部材は仮筋交。

解体作業を進めていくと、以前梁組を入れ替えられたことが判明。その際、仕口の接合が不十分で危険な状態。
これらの不具合も梁入替や添部材にて対応。

もともと左下のように大きな窓が開いていた。屋根が大きく垂れ下っていたので調べてみると、梁を横から平鉄板(黄→)で繋いでいるだけと判明。以前の改修で柱(黒→)を撤去されていたためで、やむを得ず柱を建てて窓を縮める。

火袋に増築されていた2階を撤去し、側繋ぎを復元。
少しむくりを持たせた太鼓引の松材で接合。もちろん違和感がないように塗装仕上。

出格子を復元するためファサードを解体してみると、無理に増築されていたためか、柱の足元の腐朽が激しい。
やむなく、金輪継にて根継を行う。

屋根裏(左)・天井裏(上)・床下(下)と、適材適所に断熱材を使い分ける。
価格・意匠・性能を吟味して決定。

既存の柱に溝を付き、鎧張りを組み立てる。
工場加工なら電動工具で施工ができるが、改修のためもちろん手彫。
今回も、元の姿に再生。もちろん、長く住み続けるために『見かけ』だけではなく『見えないところ』まで手を加える。
苦労も大きいが、竣工したときの達成感はなんともいえない。
蘇った『構造』は、それ自体が『意匠』。そんなに厚化粧しなくても十二分に美しい。
骨(構造)を直し、内臓(設備)が一新された京町家。安心で美しい空間が再生できたと思う。
