小さな京町家

小さな京町家を2軒改修しました。
どちらも、街中の路地に面している長屋建ての建物ですが、お隣はすっかり現代風に改修されています。
でも、こちらは昔ながらの風情に戻すことにしました(いつものことですが・・・)。
大将軍の小さな町家 1) 施工

昭和中期に床だけは水平に張りなおされていましたが、天井が傾いていたので、一旦内部は全解体します。
長屋建てですが、120mmほど沈下していたので、隣の家を気にしながら、頑張って揚げています。おかげで荒壁土が剥離し修理が大変になりました。ほぼ水平になったところで、葛石を並べ、敷框を取り変えています。

トオリニワは残すことになったので、足場を組んで塗りなおします。
ぶよぶよに膨らんだ上塗土を撤去し、際詰めをします。
その後で、中塗りをしたのですが、冬場&風通しの悪い空間なので、乾くのに3週間もかかりました。
大将軍の小さな町家 2)竣工

今回は、せっかく残っている土間を生かそうという方針で改修しています。
ミセノマは内付アルミサッシに平格子を新調。ミセニワは引違アルミサッシを撤去し、補強壁+木製片引戸にしています。
玄関前にあった電気とガスのメーターは左側に移設しました。


ハシリニワは少々寒いですが、伝統的な空間は心が安らぎます。
歪みを直すと、既存の敷框は長さが足りなくなってしまい、地松のよさそうなものを3本選んで新調し、トノコで着色しました。
室内の建具はほぼ全て再利用しています。


足元の葛石は全て今回入れ替えています。
沓脱石は、僕が石材店で小ぶりなのを選んできました。
ミセノマの天井は、あまりに汚いので、杉板を張りましたが、ダイドコの天井は状態が良かったので、修理してワビスケを塗っています。
油小路の小さな町家 1) 施工

こちらの町家は原型を留めないくらいに全改修されていました。特に通り柱が切断され危険な状態でしたので、本来あるべきところに柱を追加し、構造優先で間取りを考えました。

補助金申請用のジャッキアップの写真です。少々わざとらしいですね。
一つ石は、地震のときに動かないように、周囲に鉄筋を入れた上でコンクリートで固めています。外壁側は水が浸入しないように足元にコンクリートを立ちあげています。
本来トオリニワの荒壁土があるはずだったのですが、何故か全て撤去され、外部のトタンがむき出しになっていました。この部分はきっちり補強した上で断熱材を充填しています。
油小路の小さな町家 2)竣工

入口はシャッターから木製引違戸に変えています。
どうしても室内空間を確保したかったので、軒の出が小さくなりましたが、なんとなく町家風には見えていると思います。
ガスメーター以外はほぼ全て新調しています。


少し建具の背が高いのですが、空間のバランスが取れているのでそんなに違和感がないと思います。
室内は、建築当初の材料がほとんど化粧で見せられなかったので、思い切って真っ白な空間にしています。床も壁もホワイトです。
こげ茶色のおしゃれなカウンター収納は施主様が買ってこられました♪


この部屋は、建築当初の意匠を残す唯一の空間です。
元々10cm近く左が下っていましたが、1階を直したら、元通りになりました。(壁は全て割れてしまいましたが・・・)。
2Fナカノマは、個室にしたかったので、天井を残して鴨居と建具を入れました。
工事のときには、近隣の方々に大変ご迷惑をかけ、本当に申し訳なかったです。
路地奥の建物なので、車が前まで入らず手運びで路地を汚してしまったり、防犯用に仮囲いしたら道が狭くなったりしました。
でも、皆さん「お互い様だから」と仰って頂き、大変助かりました。
「家を買うときには近所を買え」という格言?がありますが、本当にその通りだと思いました。