京町家の再生 2戸1の京町家II

出格子が撤去されアルミテラスサッシになってしまった京町家を、あるべき状態に復元しています。
前栽を浴室などに増築されていたため、光が入らない暗い町家でしたが、全て撤去して明るい町家に戻しました。
外観は伝統的なデザインにこだわりましたが、ご予算をにらみながら、抑えるところは抑え、無理のないプランで設計しています。
京町家 改修前・改修中



間口が2間と1間半という極端に狭い『2個1長屋』です。
内部は、化粧ベニヤで覆われています。



北棟は比較的手入れをされていたので綺麗でしたが、南棟は、畳が腐朽していたり、壁土が大きく剥離していたりしていましたので、構造と荒壁以外はほとんど撤去する必要がありました。



間口方向の壁が極端に少なく、解体するまで少々不安でしたが、蟻害も少なく、意外と建物の状態は良好でした。
前栽に増築されている部分は全て解体。天井も雨漏りがひどく、天井板はほとんど撤去しました。でも、竿は再利用できそうです。



「町家は揺れてもつ」とはいえ、あまりに間口方向に壁が少ないので、筋交等である程度固めています。外部は防水紙を張った上で、通気を取って焼杉板を張ります。
外観は、微妙に階高が違うので、意匠を統一させるのに苦労しました。
京町家の再生 伝統的な意匠を復元


外観:木製建具に入れ替えました。1F左棟は駐車場用の3枚引戸にしています。出格子の中はお風呂と洗面です。この部分のみアルミサッシをつけました。
玄関:土間は洗いだし。床板は桧無地。壁は漆喰調珪藻土塗です。ポストがぎりぎり納まっています♪


奥の間:真壁にするにはあまりに痛みが激しいため、部材を入替えて大壁クロス張りにしています。聚楽調クロスの足元に、和紙クロスを半分に切って湊紙風に張りました。
2F中の間:既存手すり壁は一旦バラシて補強の上元の位置に。床は杉板張。壁は聚楽調珪藻土塗です。照明器具は、全て僕が選んだものを採用いただきました。感謝です。


手すり丸太は、垂木用の杉の小丸太を太鼓状に削って取り付けました。天井板がいい感じに焼けていますが、これは、実は、ダイケンのダイライト不燃天井材。本来は竿天に使うものではないのですが、コストと防火性能の両面から採用しました。


洗面所:安価な洗面台の既製品を置く予定だったのですが、風通しを考慮して窓を設置したため、この形に落ち着きました。収納鏡は、浴室壁をくりぬいて設置しています。
前栽:造園をする余裕がなかったのですが、なにもないのは寂しいので、私の実家にあった庭石を提供しました。だいぶ重くて、しばらく肩がこりました(^^ゞ
内部の間取りは大きく変わっている箇所もありますが、それが外観を損なうことのないように、近隣の家並に倣った佇まいへ整えました。
お施主さんはもちろん、工事中に前を通られるご近所の方にも、綺麗になっていく家を見て声をかけていただけたので、上手くいったのではないかと思います。
内部についても、遠方から京都にいらっしゃるお施主さんが、京都らしさを感じてホッと一息ついていただけるような雰囲気になったのではないでしょうか。