長屋風京町家I
長い間空き家だった京町家。
長い首都圏での勤めを終え、施主が京都に戻る。
何度も改修を重ねられ、昔の面影は少ないが、それでも、記憶をたどれば思い出がよみがえる。
今回は、隣接する2軒の町家を1軒に再構築。外観は可能な限り古い様式を復元。室内は近代的に住みよいように抜本改修を行った。

サイディング+吹付塗装+シングル葺の大壁を全部撤去し、漆喰+わびすけ塗装+瓦葺の真壁に再構築。表庭も、コンクリートを全てめくって前庭に。

アルミの玄関建具は撤去し、木製竪繁格子に。その隣の出格子も伝統的な糸屋子持格子にした。2Fも建具が目立たぬように、簾掛と肘掛手摺を新設。

式台、框、建具は新調。天井は昔の意匠そのままに清掃。
もともとあった間仕切り建具を撤去し、部屋を一つに再構成することで、広がりのある明るい空間に。

玄関からトオリニワに通じる通路は塞いで下駄箱を設置。
靴が散らからないように、収納スペースを多めにした。

もともと、舞羅戸の中に押入階段があったのだが、これだと2軒の建物の一番端から2Fにあがる事になる。そのため、階段を撤去し、普通の押入れに作り変えている。
正面のオタフク戸、右側の舞羅戸も既存再利用。
床は床暖房用の楢材に張り替えている。

通常、ナカノマは通路にしかならないことが多いのだが、今回は、思い切って、建具や垂壁を撤去し、廊下を広く見せることに。

オモテの間も和室に復元。紙障子も新調。
この肘掛手摺から表庭を見下ろすことができる。

2軒の火袋が隣同士だったので、荒壁を撤去してつなぐ。
側柱が、1.5尺ずつずれていたので、構造に影響がなさそうな柱を1本選んで撤去。
光を取りいえるために、天窓を多用。天井には桐板を張り上げている。

たくさんの書籍・荷物を整理するため、火袋全体の片側に収納棚を設置。
この狭いスペースの奥にベランダを配置している。
『意匠再生』
『構造改修』
『給排水/電気/ガス設備一新』
など再生工事のフルコースを施工。
住み継がれる事になった京町家。
その内部空間は、現代では得がたい『質感』があります。