モザイクタイルのある家

何度も改修を重ねられているお住まい。
もともと、小さな町家だったようですが、歪みを直さないまま2階や表を増築されています。
また、地盤が低いため、雨が降ると隣家から床下に水が侵入する状態で、あちこちに蟻害がみられていました。
そうしたお住まいを、地震がきても大丈夫なように、建物の骨格から補強・改修することになりました。
1) 施工 蟻害の柱を全て取替

建物の内部を解体したところ、ほぼ全体が蟻害に遭い、柱の沈下・腐朽が各所でみられました。
建物の歪みを計測すると、さほど大きく傾いているわけではないのですが、傾き方向がバラバラでした。「建物の傾きをそのままにして」改修したためだと思われます。
そこでまず、水の侵入路を止めるため、隣家側に布基礎を打って土台を上げたり、外壁側に防水紙を張ったり、水切板金を打ったり、雨樋の位置を変えたりといった手立てを施しました。

伝統木工法の建物でしたが、在来工法で増築されているため、布基礎+体力壁を作って建物を固めることにしました。
軽トラしか入れない現場だったので、生コン車が呼べず、手練作業です。
体力的にきつい作業が続きますが、ここが勝負どころです。

腐った土台を入替えたり、断面欠損の大きな柱を入替えたり、2Fを受ける梁を増やしたりしています。火打梁も随所に入れ、納得ができるまで補強します。
もともと間口方向の壁量が少なかったので、邪魔にならないところにバランスよく増やしています。

床下が狭いのと、床暖房をするため、将来潜って点検することが難しくなります。そのため、給水管はヘッダー工法を採用。鼠の侵入路もくまなく金網で封鎖しました。
水腐れで落ちてしまった荒壁を復旧し、その上にスタイロフォームを充填して断熱面でも配慮しています。

床暖房パネルは、できるだけ広く敷設しています。
左官壁は下地の状態が悪かったため、コソゲ⇒中塗り⇒再度コソゲ⇒中塗りと、手間がかかっています。
クロスは2部屋の改修にもかかわらず9種類に張り分けしています。職人さんへの指示出しが大変でした。(^^ゞ
予想していた以上に基礎・構造補強に時間が掛かってしまったため、工期が大きくずれてしまいました。
。
2)竣工 明るく開放的な空間に
お施主さんはこのお家や、かつて周辺に立ち並んでいた建物の面影にとても愛着をお持ちのようでした。そのため外観は既存の形を残し、変更する箇所も伝統的な意匠から大きく外れないようにしています。


左右で75mm傾いていましたが、水平に直しています。
天井も、竿縁吊り直しています(竿縁と小屋裏丸太が接触しており大変でした)。
柱は金輪継ぎで強度を確保しています。内装材は全て桧です。

すっかり洋風のお住まいになりました。名古屋モザイクタイルがアクセントになっています。
台所とリビングの間の壁を撤去し、対面キッチンに据え直しました。
台所建具はジャイアンツにちなんで、Panasonicの上吊戸にオレンジ色のダイノックシートを張りました。キッチンは新調していますが、水栓とガスコンロは再利用しています。


洗面台は元々と同じ位置ですが、天井裏に谷樋板金が露出していたため、漏水防止の観点から天井を一部下げています。
階段1F部分は根継をした上で、壁を補強したため、壁が厚くなってしまいました。でも、上部は、空間を狭くするのはもったいないので旧来どおり漆喰を塗り直しています。
建物の状態が悪い上に、前面道路が狭く、基礎と構造補強だけで1ヶ月半以上かかってしまいました。工事現場に雨が流れ込んできたり、屋根や2F床組が垂木や根太だけで繋がっていたりしましたが、今しかできないことは全て対処しています。
凝った内装ではないため、完成してしまえば、工事中のこだわりは隠れてしまいます。
でも、竣工後「アラキさんに頼んでよかったです。基礎からしっかり直していただいたので安心できます」といわれ、本当に嬉しく思いました。