アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

がんばれひよこちゃん

現場にいることだけで幸せ

子守さん

子守(以下、子)「がんばれひよこちゃん♪ やってまいりましたのは京都です。この地に今も残る古い町家の修繕を行う大工職人のひよこちゃんが今回の主役です」

町家

子「あ、木の香がしてまいりました。この町家ですね。今は工事中と書いてあります。こんにちは」
山脇(以下、山)「こんにちは」
 
子「はじめまして。今回は女性職人のひよこちゃんです。大工4年目という山脇美保さんでございます。」

町家に入る

子「今の木造住宅はプレカット工法といいまして図面をコンピューターに入れれば勝手に切ってくれ、現場では組み立てるだけというのが主流なんです。普通は現場でカンナをかけたり切ったりしないんですね。でも、町家の改修なんで、彼女はそこを丁寧にやっているタイプの大工のひよこちゃんです」

山脇

子「この町家では、どういうことをやってるんですか?」
山「大正中頃の建物なんですが、古くなって痛んでるところを直し、きれいなものに替えて住みやすいようにしています」

7つ道具

子「ここには何が入ってるんですか? おお、this is七つ道具ですね。ノミやノコギリ、カンナ…。 大工さんには欠かせない商売道具ですね。ちょっとずつ集めてきたという山脇さんの宝物。きれいに整理されていますね」

血が・・・

子「(傷を見つけて)ここどうしました?」
山「あんまり覚えてないです。『気づいたら血が出てました』みたいな(笑)」

地元のお寺で

子「大工を志すようになったのは中学生の頃。たまたま法事で行ったお寺での出来事がきっかけでした」
山「母が『あの辺おじいちゃんが仕事したんやで』と言ってくれました。おじいちゃんって、会ったことがないんです。その時に初めて大工の棟梁であったおじいちゃんの存在を知り、今でも残っているというのがスゴイと感じたんです」

おじいちゃん

子「彼女は、木造家屋のことをもっと知りたいと専門学校に入りました。そして大工の道に進むことを決めたんですが、どこに行っても受け付けてくれないということが続いたそうです」

おじいちゃんの存在

山「体力がまず無い。それに女性だし…。でも、やっぱりやりたいという気持ちが強かったんですよ」
子「そんな彼女の気持ちを受けまして、知り合いの左官屋さんがアラキ工務店を紹介してくれました」

アラキ工務店

山「一週間来てみるか?といわれまして、一週間現場の掃除やらを手伝わせてもらって…。木の匂いってあるじゃないですか、私もう埃でさえもうれしかったです。その時。きたなくなるとかよごれるとかどうでもいいぐらい、現場にいることだけで幸せでした」

一人前になるということ

朝7時

子「毎朝5時過ぎに起きて、7時にやってきます。その後打合せをして、現場に向かいます。重いものを持つのは平気だったという山脇さんなんですが、身長が150センチしかありませんので、こうした長ーい木材が悩みの種。重心を外すと持つことができません。

35キロの木材

バランスをくずしてこけることもたびたびあったんだそうです。肩を見せてもらったら、あざがついていました」

カンナくず

(カンナ削り)
足達職人「これはあかん、ネズミのシッポみたいた木クズだしてどないすんねん」
子「素人の私からは山脇さんも上手に見えたのですが、この道30年のベテランは違います。均等に力を入れないと薄く削れません」

足達

足達「こんなんは数やね。先輩の削っているのを見て昼休みに先輩のカンナをちらっと見たり。盗めということですね。」

初めてまかされた現場

子「実は先月からある町家を任せてもらったんですね。ただ木材を取り付けたらいいというわけではありません。図面には描かれていない『全体のおさまり』といわれるところがあるんです。かっこよくとりつけていくのが職人の腕の見せ所。でもまたそこが難しいところでもあるんですね」

あれっ

山「先輩の仕事を見てるつもりなんですけども、1人でやれといわれた時に、『あれ、どっから手をつけてよかったんやっけ?』ということもあったりします」
子「5年で一人前にならないと、一人前になれないとう暗黙のルールがあります。今4年目ですから彼女にとって正念場であります」

本人は焦っている

荒木「一人前になるには、いろんな仕事をわかって、指示を出さないといけない。そりゃ本人は焦ってるでしょうね」
子「終業は夕方6時半。でもまだまだ見習い中の山脇さん。先輩が帰った後に刃物を研いだり、作業の練習をしたりとか、まだまだ仕事は続きます」

先輩が帰ってから

子「最後に将来どんな大工さんになりたいかを聞いてみました」
山「やっぱり自分の名前とかを刻みたい。棟を上げる時に墨で名前が書いてあって」
子「それはおじいさんの影響ですか?」
山「時代を超えて存在はそこにあるという感じです」

子「人から見てなんといわれようとこれが私の仕事だという瞬間って誰にでもあると思うんですが、おじいちゃんに触れることで彼女に入ったスィッチ。汗と埃にまみれながらその回路が繋がるのを楽しみにしています。がんばれひよこちゃん」

 
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