織屋建ての民家
実は、昭和初期に建てられた織屋建の京町家。総2階建母屋に増改築が繰り返された水廻りが付随。織屋建ての特徴である『機場(土間の吹抜空間)』など当時の面影を目視する事が出来た。改修後、玄関を移動し、ハシリニワも無くなり京町家らしくはなくなりましたが、民家の雰囲気をよく残した改修になりました。
できるだけ古い材料を生かし、荒壁土を残してリフォームしています。
民家のリフォーム 1) 施工
1列2室+土間(機場)の平面構成であり、間口約2.5間、奥行約7間、切妻和瓦葺きの2軒長屋。
織屋建の場合、大きな土間空間が歪むことが多いのですが、二戸一の連棟だったため、比較的よい状態。
それでも、側柱の足元は腐朽が進んでおり、葛石を据え直して柱の足元が濡れないようにした上で、一通り根継を行う。もともと床下だった部分は、下地の小舞竹も傷んでいたので編み直し。
雨漏りが激しい部分は、壁土全体が剥離したため、壁を作り直す。
織屋土間だった部分は、野地も傷んでいたため、垂木から取り換え。
垂木を見せ、化粧野地表しとし、母屋木を含めた構造を化粧でみせる事に。
化粧野地をみせるため、その上に断熱材を敷き詰め、通気層を作る。
ファサードも、長押・吊束といった化粧部材をそのまま生かしてリフォーム。
大工さんが終わった後、左官塗をして完成。ここまで、着工してから半年以上経過。
民家のリフォーム 2)竣工
外観は腰板鎧張、新壁黄大津塗。虫籠窓の中はペアガラス。屋根は淡路小瓦一文字葺。2階の建具は以前の意匠にあわせて新調。
外観こそ古色を塗っていますが、内部は白木で仕上。敷台は地桧。横繁桟戸は地杉。取次の建具は真中2枚は紙張障子で両脇は横繁桟戸としている。
京町家だった時のハシリニワと織屋を一室にし、大空間を実現。
そのままでは、構造面で心配なため、梁を入れ替え、両袖に補強壁を。
また、採光を確保するため、天窓も広い。
取次は元々ダイドコだった部分で、大和天井をそのまま生かす。
階段は、広い間口を生かして壁面収納を作りました。手すりは杉小丸太。こちらも採光を考慮し天窓を新設。
メリハリをつけ、2Fは大壁・壁紙仕上としています。
ただ、和風の雰囲気を残すように注意して施工しました。
自身始めての織屋建京町家の改修。その最大の特徴である『機場』の面影を再現しながら、実生活を営む上で無理のない再生ができたと考える。