アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

アラキ工務店 株式会社 アラキ工務店

京町家の構造改修

出格子をミセノマからみる
裏の外観

 3軒長屋の傷んだ京町家。最初に現場調査をしてから3年経過した頃、ずっとそのままになっていたのですが、ようやく着手する運びになりました。当社は、構造改修までの工事を担当します。
 着工当初はこの傾いた建物をどこまで正常な状態に直すことができるのか、不安な気持ちでスタートしました。
 特に難しいと考えていたのは、間口方向の少ない壁量で、3軒長屋の傾きをどうやって直し、戻らないようにするのかというところです。
 設計士さんや大工さんと綿密な打ち合わせを行い、やはり最低限の壁量では全体の歪みを持たすのは無理であろうという判断から、仮筋交いを残したまま2期工事へバトンタッチする方針となりました。
 現場を担当した大工さんは、牛田 秀樹くんです。

京町家のリフォーム 1) 施工

仮筋交
仮筋交
 最初に建物が崩れないように仮筋交を打って安定させます。
ベース基礎掘削
ベース基礎掘削
 躯体の下を掘削します。柱を浮かしながらになるので、大工さんにやってもらいます。
基礎配筋
基礎配筋
 型枠を組んで鉄筋を編みます。これも腰をかがめながらの工事です。
ベース基礎打設
ベース基礎打設
手練りで少しづつコンクリートを打設します。大変やりにくい仕事です。

 作業の様子を撮影しました。柱を浮かしたままの工事で、腰が疲れてへとへとです。
 通常、町家の改修をする際の礎石工事は、ジャッキUPで建物を浮かしながらの作業となります。そういったノウハウを心得ている大工さんにコンクリート工事も一緒に施工してもらうのですが、今回は3軒分の礎石工事ですので、さすがに大工さんも体力的に限界に達し、困難を極める現場となってしまいました。

出格子修理
葛石据付
葛石が固定出来たら根継した柱を降ろします。これで一安心です。
小舞編
小舞編
躯体が安定したところで小舞下地直しです。一部、京町家再生研の見学会で編んでもらいました。
庇復旧
庇復旧
庇は腐朽がひどかったため、新調しました。
垂木補強
垂木補強
 大屋根も直します。垂木がボロボロだったのですが、事情により、半分は残しています。
野地板張り
野地板
 3軒分の野地板を一気に張ります。杉の5分板にルーフィングを張ります。

京町家のリフォーム 2) 竣工

ファサード
ファサード
 朽ちていた出格子を修理し、建具を補修・新調しています。水道工事が別途のため、裏庭の雨樋を表に仮出ししています。
表下屋根
表下屋根
 表の2Fです。表の下屋根は朽ちていたので、野地からやりなおし。木部はべんがら塗。大屋根・下屋根とも葺き替えています。
ミセニワからおもてを見る
ミセニワからおもてを見る
 壁は中塗止。足元のベース基礎と葛石は新しく入れ直しています。柱が真っ直ぐになおっています。
ザシキ
ザシキ
 柱下部の色が変わっているのは根継をした部分です。荒壁は1Fの傷んだ部分だけ小舞竹を編み直して塗り替えています。
ハシリニワ
ハシリニワ
 足元に礎石が綺麗に入っています。内装工事後見えなくなるかもしれませんが、大切な部分です。
ヒブクロ
ヒブクロ
 屋根は垂木・野地板も傷んでいる部分をやり直し、全面葺き替えをしています。天窓からの光がまぶしいです。
ハシリ奥
ハシリ奥
 側つなぎは、内装工事でどうなるかわからないため、仮設置しています。突き当りに見えているのは外壁の透湿防水紙です
2F
2F
 2Fも内装は一切していません。
 ゆがみを直して後は、借家人さんにお任せになっています。
 今後の課題として、こういった大きい規模の現場では、大工さんだけでは基礎工事が大変なので、基礎屋さんと上手く連携をとり、無理のないよう工事を進める対策を練らなければなりません。
 厳しい現場ではありましたが大工さんの努力の甲斐あって、建物は水平垂直が戻り、2期工事が少しでも納め易い状態へ復元すことができ、お客様にもお喜び頂けました。欲を言えば2期工事も続けて行いたかったのですが、借家人さんのお知り合いが施工されるとのことです。
現場監督 米沢 和也 
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