京町家の再生 江戸期の京町家

江戸時代に建てられた厨子二階の京町家です。大きく建物が変形し、荒壁土もかなり剥離した状態でした。京都の市街地においては、江戸期の町家は珍しく「京町家ファンド」を活用しての改修を行いました。
今回は、冨 家 設計事務所さんからお仕事を頂戴しました。
京町家のリノベーション 1) 施工

幕末の蛤御門の変の際には、長州藩士たちがこの建物の前を通ったと伝わるほど、数々の歴史をくぐり抜けてきた建物は、蟻害や不動沈下による傾きで、満身創痍の状態でした。
全体状況を把握するために、まずはスケルトン状態まで解体します。
数回の大改修を経ていることや、元は瓦葺きでなく板葺であったこと、卯立があったことなど、珍しい特徴がみられました。

柱の蟻害や根腐りも多数あり、ひとつひとつ改善の方針を立てます。
平屋とはいえ、耐力となる壁が極端に少ないので、補強を行います。今回は荒壁で行いましたが、冬場で乾燥に時間がかかりました。
建物の躯体を強制して、歪んでいた妻壁のラインも真っすぐに直します。緩んでいた床組も、遣り替えてしっかりしました。


柱の根継も必要に応じて行います。
屋根面は15cm程度の不陸がありましたが、綺麗に瓦が葺けるように桟を流します。瓦屋さんの手間の半分近くがこれにかかっています。
もともと石屋さんだったお家に残っていた御影石を、玄関へのアプローチへしきました。
← 出来る限り建物を元の姿に戻そうということで、北山丸太の化粧天井は、今回掛け替えました。一番贅沢な空間です。
京町家のリノベーション 2)竣工

建ちが低く、間口が広い建物のプロポーションは、郊外の民家建築のような雰囲気があります。
格子は復元しつつ、現代の生活にあわせてガレージを設けています。
柔らかくムクリをつけた瓦屋根がきれいです。


嫁隠しはもともとあったものを、綺麗に掃除して取り付けています。
大きな天窓のおかげで明るい空間になりました。
火袋はこれくらいの大きさが、実生活にはちょうど良いですね。


ガレージの敷石の配置は、植木職人の松本さんのセンスで綺麗に並びました。
ナカノマの舞良戸は合うものを弊社の倉庫から選んでいただきました。


縁側がとても気持ちの良い場所になりました。
古い建物の中にも、こういった白木の明るい場所があると、気持ちがスッとします。
もとあった長持ちも、味わいがあっていいですね。
綺麗になった建物を前にして喜んでいただけて、こちらとしても大変有り難く思います。
明治以降の建物にはない造りに触れる機会ともなり、勉強になりました。