アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

2.木屋瀬町家 旧高崎家石場家(続)

(北九州市)

白井 立派な吹抜けですね。こうした吹抜けのお住まいは京町家でもみられましたが・・・
荒木 昔はかまどがあり、火や煙を逃がすために上部に部屋を作らない事が多かったと思います。それで「火袋」と呼ばれているんです。
 この上のほうにある窓も煙を逃がすためのものです。下から紐で引っ張れるんですよ。やってみましょう。

 木屋瀬では雨戸の枚数は多く、入隅出隅で回転して戸袋に収納される知恵がほどこされている。そして、ここには内側からの鍵、「サル」が施されている。
荒木 京町家では入隅が多いのですが、ここの出隅はダイナミックですね。ほら、こうやってまわすんですよ。いい仕事をされてますね。

白井 本当ですね。
荒木 確りした戸締りといたるところにサルが施されているのは、他国人の出入りが多い宿駅という場所柄、防犯に留意せざるを得なかったからでしょう。

 箱階段。階段と箪笥をかねた箱階段は、木屋瀬の多くの町家でみられる。
白井 箱階段は京町家などにもよく見られますが・・・
荒木 この部屋は「ミセ」といいまして、商用に使われていた部屋です。そのため、書類などの収納に手じかなのと、かつて京都から大工職人を招いて、普請にあたらせたことがあったため、京町家の知恵を拝借したのではないかと思います。
荒木 では、2階にあがってみましょう。

白井 天井が変わったつくりですね。
荒木 これは「船天井」といいます。合掌組でストレスに強い工夫がされています。
白井 窓からの景色もいいですね。
荒木 そうですね。2階にこのような立派な部屋をつくられたのは、水害時の緊急避難に備えてとも考えられますが、もともと藁葺き屋根だったのが大火災の経験から瓦葺き屋根に変化したため、藁葺きのよさを残したものとも考えられています。

白井 さて、屋根裏にやってきました。削り跡のようなものが見えますが・・・
荒木 ヨキといわれる道具で斫った証拠です。九州方面の大工さんはヨキの技術がたくみだと言われています。

白井 座敷にやってきました。こちらもきれいな漆喰塗がほどこされています。
荒木 光が白漆喰に反射して明かりを増量しています。白い漆喰壁と外の景色のコントラストが実にいいですね。木屋瀬で漆喰壁が多く使われているのは、近在の真砂地区でよい土がたくさん手に入ったからだと思います。

白井 いかがでしたか。この街道を参勤交代の大名行列が通り、オランダ渡来の文化や文明を運んだ事を思うと、歴史のロマンを感じます。
 木屋瀬の町並みと町家は、先人が遺してくれた貴重な遺産であり、その特質を損なうことなく保存に尽力されている住人のみなさんに敬意を表したいと思います。
 かつて、囲炉裏ばたにすわる座なども厳しかったことは、囲炉裏と人との長い付き合いを物語っているようです。

30分番組のため、一部省略して掲載しております。
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