アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

7.洋館編 坂牛家

(北海道小樽市)

 北海道の中心地札幌は、明治期の計画によって碁盤の目のような町並みが、市内には歴史的な建造物が残されています。札幌から西へ車で1時間足らず、石狩湾に面した小樽市。かつては石炭積出港、貿易港として栄えた港湾都市です。
 今回訪ねる坂牛家では、洋館を通じて施主と建築家の関係、建築家が設計するメリットについてご紹介します。

白井 白樺林を抜けるとほんとに素敵なモダンな洋館が見えてきました。今回はシリーズ始まって以来の洋館のご紹介なんですけど、今回は初めて施主さんと大工さんの間に建築家という立場の方が入ります。
荒木 今回は設計家が携わったいいところを検証していくのが私の仕事かなと思っています。

白井 こちらのお宅は70年前に作られたそうです。田上さんという日本人の建築家が設計されたそうですね。
荒木 今作られても新しい感じがします。
 坂牛亭は昭和3年に建てられたもので、建築費は当時の価格でおよそ1万円。

白井 煙突がいかにも洋館らしく、女性にとっては憧れの煙突という感じがします。
荒木 あの煙突は、各部屋の暖房を集めた集合煙突です。広い家なので、煙突を横に這わすと危険なため、2箇所にしていますね。
 2階にあるベンチのようなものは、フラワースタンドといって夏になるとお花を飾って道行く人にお花を見せるためのものです。

白井 そういう場所も設計に入っているんですね。

荒木 屋根がトタンなんですけど、葺き方が北海道特有の吹き方です。たてはぜ葺きといって、普通ははぜが1回だけなんですけど、それをもう1回起こしてあります。ですから上を踏んでもぜんぜん曲がらないんです。ただ、幅の狭い葺き方は手間ひまがかかります。雪の多い地方では雪が暖房で解けて重くなるためです。
 それから、道から入った家は、雪止めをせずに屋根の勾配をきつくして、雪を落とすようにしています。
 雪止めが無いことで、急勾配になり、庇の美しさを際立たせています。

荒木 ガラスの建具ですが、パテ切りという手法で、気密性が高く、ガラスも2重になっています。
白井 寒さを防ぐためですか?
荒木 そうです。今はペアガラスというものがありますが、当時はありませんので、2重にする必要があったのです。

荒木 ガラスの下はドイツ下見になっています。角に押縁が組んであるんですね。
白井 補強のためでしょうか。
荒木 雪が窓のあたりまでくるそうなので、雪の力で家が傷むのを防ぐためです。

白井 可愛らしい手作りのお庭ですね
荒木 この庭は初めからこうなっていましたか?
坂牛 昔は円形でありまして、縁につげの株が50cmおきに配ってありました。それが枯れてしまいまして、30年ほど前にレンガにしました。
白井 アーチ型になっていておしゃれですよね

荒木 夏になると屋根の中に熱がこもります。屋根がトタンになっていますので、暖かい空気がたまりやすい。それを出すための換気口が何箇所もあります。
 夏場の屋根の熱を逃がすための換気口は、また室内の換気にも役立っています。

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