アラキ工務店 京都市右京区:京町家、古民家、大工さんと建てる家

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町家探訪

8.町家 吉井家・竹鶴家

(広島県竹原市)

 広島県の南部。瀬戸内海を望む人口およそ3万人の町、竹原市。市内を流れ瀬戸内海にそそぐ本川は運河で、潮の干満の差がはっきりと現れます。本川の流れに沿った狭い山麓に竹原の古い町並みが南北に伸びています。雨が少なく温暖の気候に恵まれた竹原は塩田の町として栄えました。その経済力で竹原独特の町並みと商人文化を創り、また学問に力を入れるようにもなりました。
 今回訪ねる吉井家、竹鶴家では、気候が温暖な地域ならではのアイディアや工夫についてご紹介します。

白井 いきなり映画のセットの中に迷い込んでしまったような錯覚にとらわれてしまってまだこの辺をお侍さんが歩いていそうなそんな気がしてしまいます。本当にタイムトリップできる町ですね。
 竹原は戦禍にもあわず、大火も無かったため、今でも江戸時代中期以降に立てられた町家が数多く残っています。

白井 今回は、ここ竹原の伝統的な建物に施されている知恵や工夫をいろいろ伺っていきたいと思います。荒木さん、今までは雪、風、雨といろんな自然の災害に目を向けてきましたが、こちらの竹原は反対に気候が穏やかだそうですね。
荒木 塩田で栄えた町ですから、雨が少ないだろうと思います。
白井 京都では年間雨量が1500mmだそうですが竹原ではなんと1100mmだそうです。
荒木 雨が少ないということは、建物の方に少ない雨を利用した工夫があるのではないでしょうか。

白井 立派なお家ですね。
荒木 正面から見ますと、屋根が3つあって、屋根と屋根の間に樋があって、家の中に樋が走っているような感じですね。また、土格子が3つともついていますし、屋根には千枚螻羽という瓦が使ってあります。瓦が一番多いところで3枚重なっているのですね。ですから耐久力もありますし、1枚割れても雨が入ってきません。

荒木 竹原はいろんな格子があります。これは板格子といいまして板に打ち付けています。あちらは組子格子といいまして、組んであります。いろりろ見て回ると格子がバラエティに富んでいます。
白井 格子一つでも楽しめそうですね。

荒木 この家の面白いところは、鼻隠しがあるところです。最近の家はほとんどの家が木造の場合は打ってあります。これは垂木が動かないようにするためです。
白井 木も傷まなさそうですね。
荒木 樋が痛んでも垂木の先が腐らないようになっています。

白井 こちらの竹の色も、入り口とは一味違ったいい色ですね。桟がまたリズムがあっていいデザインになっています。
竹鶴 私の祖父の時代、酒造りに使う道具を洗うお湯で磨かせたそうです。酒焼けした煤竹といいますか。
白井 日本酒というのはすごく艶を出すんですね。

荒木 お座敷に上がるところが高いです。
竹鶴 60cmあまりあります。
荒木 下が開いて下駄を入れるようになっています。
白井 便利ですね。
荒木 座ってよし、上がってよし。長話にちょうどいいです(笑)床が高いのは、海の満潮と関係があるんですか?
竹鶴 台風とか大潮とかの関係ですね。

白井 すごい松の木ですね。
荒木 この松は正真木といいまして、庭を作るときの1番の木です。この家より古いんじゃないかと思ってしまいます。
白井 歩き出すんじゃないかと。恐竜の足元のようですね。
荒木 外路地から内路地に行くときに、着物の袖を擦るから、袖擦り松といわれています。

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