職人今昔
5.弘前の民家
冬の豪雪地帯の弘前は11月に入ると雪囲いが始まる。
私と白井さんと3回目の「住まいは文化」ロケで、弘前城の北門前の石場家へお伺いをした。
石場家の外観は大変華奢で、屋根勾配も2寸8分の緩い流れで私の考えは最初から狂わされた。当主のお話によると岩木山(西)からの風が強く雪が水平に近い状態で屋根に積もる。そして屋根上で氷に変わり、勾配がきついと雪が凶器となって落下する。今は少ないが、弘前の何所の家でも庇を突き出し通行できるこもへ(小店)があり、雨や雪が降るとこもへを皆が歩き大変喜ばれたらしい。また、石場家のこもへの角に大きな石が置いてあり、角柱を痛めない為かとお聞きすると、道路を歩くと下駄の歯に雪が固まり付くので、その雪落としの為にどこの辻々にも置いてあるとのお話で大変驚きました。
敷地を他人が歩き、尚歩く人の為に石を置く、それが助け合いの精神なのだと、大変心を打たれた。石場家は国の重要文化財の指定を受けた住宅だが、お店と生活もこの建物と共にされており「板一枚棚一枚でも許可が必要なのです」と聞かされた。
白井さんとお伺いした当日は七月中頃の大変蒸し暑い日でした。でも冬のしつらえ中のロケなので、暖炉に火を入れ赤々と燃え上がる炎を見ていると、時間の経つのを忘れる程で、雪国の春が来るのを待つ思いが肌で感じられた。
建物内部には雪国ならではの知恵が随所に見られ、京都に住む私には大変参考になる部分が多かった。当地では、雪は悪魔の如くと言うほどで、大雪の度に町衆達が庇の雪降しの手伝いをし、町全体が雪と戦い雪と暮らす心が肌で感じられ、もう一度冬に訪れてみたいと思う旅でした。


